社会派講談の旗手 神田香織(前編)
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第6回
- 講談
瀧口 雅仁
2025/07/27
師匠との別れと講談協会での支え
香織が山陽に入門したのは、1981年(昭和56年)。講釈師の数も少なくなり、神田山陽や田辺一鶴が素質のある人を積極的にスカウトしていた頃だ。香織と同じ頃に入門したのが、神田紫、紅、すみれと、少し上に神田陽子がいる。その山陽は講談協会の会長に異を唱え、1991年(平成3年)に脱会し、日本講談協会を立ち上げる。その時、香織は上述の理由もあって、師匠の元を離れることになる……。
― 山陽先生の教えといったものは何かありますか。
香織 私は東北の出身じゃないですか。講談は江戸弁が多くて、でも時々、田舎者が出てくる時があるんです。そうしたら「君は田舎者のセリフがうまいね」って(笑)。嬉しいなと思いました。チャキチャキした江戸弁というのは、なかなか身につかないものですから。
― 私は先生の『フラガール』を聴くと、母親を思い出すんです。
香織 お母さまが福島でしたっけ。東京出身の人が江戸落語をやるのと同じように、『フラガール』はネイティブの東北弁でできますから、江戸っ子の噺家さんたちはこれぐらい楽しくやってるんだろうなあと、『フラガール』をやるたびに思いますね。子どもの自分にも戻れるので、大好きな話です。
― 結果的に山陽先生の元を離れることになりましたが、講談協会のみなさんは優しかったそうですね。
香織 私が講談協会に残ることになった時に、宝井馬琴先生が動いてくださって、結局、小金井芦州(こがねいろしゅう)会長の預かりになったんですが、いわきからたまに帰って来ると、まだ弟子に入ったばかりの織音(おりね)も一緒で、近況報告のような形で芦州会長のもとを訪ねるんです。
織音のことも可愛がってくれましたし、お会いした時の話が楽しくて。その頃、芦州先生のところに弟子がいたんですが、「あいつはなあ、バカなんだよ」。それでまた「あいつはなあ」と言うから、次に何を言うのかと思っていたら「バカなんだよ。アホなんだよ」って、それぐらいしか言わないんです(笑)。それがおかしくて。でも笑えないから、グッと我慢して、そんな思い出があります。それに何かあると、「君も苦労が多いだろうから、頑張って」って手紙をくれるのが嬉しかったですし、今でも感謝しています。
― 芦州先生からは話は教わりましたか。
香織 直接、話を教わることはありませんでした。講談本流の侠客物とかは私に合わないと思ったのかも知れませんし、私も伝統的な講談というのは、男の人のものだと思っていたところがありましたから。性別で分ける訳ではありませんが、女性は女性ならではの特色を活かした上で、自分にあったものを探していけばいいと思っていましたから、話の間の取り方だとかを学ばせていただきました。
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