社会派講談の旗手 神田香織(前編)
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第6回
- 講談
瀧口 雅仁
2025/07/27
映像を超える語りの力
― 役者をやっていた時代のことで、講談に役立ったことはありますか。
香織 お芝居というのは照明とか音響とか、色々な効果的な演出を用いますから、そうしたことを講談の読みに持っていけたらいいなと思って、その一つが剣舞入りの忠臣蔵であったりします。
―『チェルノブイリの祈り』の時にも効果音を入れたりしていました。
香織 そうですね。照明と音響を使って。よく「『チェルノブイリの祈り』のあの映像の印象が残っている」と言われるんですが、映像は一切使っていないんですよ。聴いているみなさんが頭の中で映像を作っているんです。それが自分が見た映像であると勘違いされるくらいに、映像が浮かぶんでしょうね。私としても、みなさん一人一人が頭の中に映像を作って、それを記憶の中にとどめていただきたいという演出を用いていることも確かですし、うまくいっている証拠かなとも思います。「『はだしのゲン』も映像を使っていますね」と言われることがよくありますが、使っていません。
― でも、それが話芸の素晴らしさであると思います。演者としては聴き手がそれぞれに想像して、それぞれの世界を作ることができる。話芸として贅沢な点であると思います。
香織 そうなんですよね。それがまた講談の魅力であると思っています。素晴らしい映画もありますが、観た時は感動しても、観終わった後、少しするとその感動が薄くなったり、消えてしまうことがあるんですよね。映像の場合は次々といい場面が来ますから。でも自分の頭の中で作り上げた映像というのは残るんですよ。それが映像と語りの違いかなと思っています。
― 先生の読まれる『稲むらの火・浜口梧陵伝(はまぐちごりょうでん)』でも、津波がやってきた時に人々を誘導するために、藁に火を点ける。あの場面が頭の中に映像として残っています。
香織 ありがとうございます。

(以上、敬称略)
▼神田香織(講談協会 公式HP)
▼神田香織 X(旧Twitter)
(中編に続く)
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