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ネットワークとご縁
「古今亭佑輔とメタバースの世界」 第2回
- 落語
VR落語が実現するまでの過程
最初の1ヵ月間は、公演に向けてとにかくVRの操作に慣れること、そしてその中でプレイする人たちのカルチャーを知ることで精一杯だった。
自分の使用するプラットフォーム、VRChatではまず登録をすると「new user」というランクから始まる。そのランクではアバターを変更することができないので、公演に相応しいアバターを身に付けるために、とにかくプレイ時間を稼ぎ、他のユーザーにフレンド申請(相互フォローのようなもの)をして友だちを作らなければならなかった。
最初はVRChat内での独特の言葉や文化に戸惑いながら、色々なことを学んだ。友だちの作り方とか……。一人でできると思っていたけれど、結局、沢山の人と交流をした。
そして無事にランクも上がり、落語ができるように。ここまでも人にアバターを作ってもらったり、落語ができる寄席(仮想空間)を作っていた方を紹介してもらったりと、沢山の人にお世話になった。
そして、Rさんからご提案いただいたVRでの英語落語の公演当日を迎えた。自分としては「まぁ、最初にしては頑張った……」くらいの感想しかない。緊張でよく覚えていないのが正直なところだ。リアルと同じように、会場にざわざわと集まってくる人々の話し声、開演前のブザー音。あの瞬間は、本当に緊張感に包まれていた。寄席で初めて落語をやった時を思い出した。
だが、終わってみると、やはり悔しかった。「もっとできたのではないか? もっと喜んでもらえたのではないか?」と、つい思ってしまう。
試行錯誤の舞台裏
そこから2ヶ月間、考えた。
落語をVRで定着させるためには、そして自分のスキルを上げるためには、公演を続けなければならない。しかし、今後もRさんに頼るわけにはいかない。海外向けではなく、日本語話者向けの公演をしなければならないからだ。くよくよと考えながらも舵を切った。
公演をやるにはリアルの公演と同じで、運営を手伝ってくれる人や場所が必要だ。そこで自分は、VRの中で寄席の仮想空間を作っていたIさんにコンタクトを取る。Iさんは落語が好きで、その好きが高じて寄席(仮想空間)を作ったのだと言う。あまりにも実在の寄席と似ているので、関係者かと疑ったほどだ。

そこから、Iさんと二人で試行錯誤が始まった。ポスターはどうするか、告知はどうするか……。
やがて年が明けた、2025年1月13日(月)に『VRC落語会』第1回目の公演を行うことが決定した。「同期会」と言って、同じ時期にVRを始めた人たちが集う大規模のグループがある。そこを中心に様々なところで告知を行ったものの、はじめは「30人から50人くらい集まれば、それでいい」と思っていた。