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私が思う「落語界とお笑い界の違い」(後編)

ピン芸人・服部拓也の「エンタメを抱きしめて」 第4回

落語の寄席囃子・出囃子

 落語会では、寄席囃子と呼ばれる開場音楽の「一番太鼓」、開演前の「二番太鼓」、終演合図の「追い出し太鼓」といった太鼓や三味線、笛を使った伝統的な曲を使います(寄席や大きな落語会では生で演奏され、小さな落語会ではCDなどが使われるのが一般的です)。

ヲタク落語家 一番太鼓を叩く(春風亭吉好師匠のYouTubeチャンネル)

 また、日本の伝統音楽や洋楽などを元にしたり、さらにはオリジナルで作られた自分だけの登場曲、出囃子(でばやし)を持つことも知りました。

2025年5月、真打に昇進された春風亭鯉づむ師匠と筆者。
 師匠の出囃子は、スタン・ハンセンの入場曲「サンライズ」

 またコマドの落語会では、先人たちから受け継がれた多数の出囃子を収録したCDがあり、高座に上がる前には、そこから流す出囃子を決めるのですが、興味深かったのは香盤(序列)と言われる、お笑い界で言う「芸歴」が先輩の方が、まず自分の出囃子を選び、それを確認した後輩の方が別の曲を選ぶのよく目にしました。

 「先輩がこの出囃子を使うなら、私はこれかな?」とか、「今日の噺(落語)に合うのはこれかな?」といった具合で決められるが、毎回、新鮮でした。

お笑いの出囃子(登場曲)

 お笑い界では、(常設の劇場を持つ吉本以外の)いろんな事務所の方が多数出演するお笑いライブにおいては、基本的にネタの出囃子は同じだったりします(何十組と出演者が多いお笑いライブでは、音響ミスを減らし、スムーズに進行させるためだからだと思います)。

 私が主催するライブは、できるだけその芸人さんに合った出囃子を選ぶのも楽しみの1つですが、固定の出囃子を持たない芸人さんが多いと思います(おそらく自分の好きな出囃子を使えるライブが少ないから)。

 自分の好きな音楽で登場するのは気分が上がり、ライブの演出としても相乗効果で楽しめるので、使えるライブがあるなら、若手芸人の方は1つ~2つは候補曲を持っていた方が良いと思います。

 プロレス・格闘技や野球選手の登場時に「この曲を聴いたら、あの選手が出てくるぞー!!!」ってテンションが上がるイメージです。ちょっと、アントニオ猪木さんを想像してみてください……。

 イノキボンバイエ!!
 イノキボンバイエ!!
 イノキボンバイエ!!
 イノキボンバイエ!!
 イノキボンバイエ!!……

 ファイトッ!
 ファイトッ!
 ファイトッ!
 ファイトッ!
 ファイトッ!
 ファイトッ!
 ファイトッ!
 ファイトッ!

 チャーララーン♪ チャーラーララーン♪ チャーララーン♪

Inoki Bom-Ba-Ye (Theme of Antonio Inoki) アントニオ猪木

 ほら、テンション上がったでしょ?(笑) そんな具合で、この人のこの出囃子を聴くと、楽しみが迫って来るという感情になると思います。意外と、落語会やお笑いライブのBGMを楽しみにしているお客様も多いと思います。

 私は、最近の単独ライブでマイブームだった浜崎あゆみさんの曲を客入りから終演まで随所で流しまくりました。

浜崎あゆみ / Boys & Girls

 客席にいたBoys & Girlsは終始、違和感を感じていたようです。自分に合った曲を探すことも大切ですね(笑)。