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『あんぱん』と『はだしのゲン』と『のど自慢』

東家一太郎の「浪曲案内 連続読み」 第4回

カネ2つでも笑顔の演技! 放映で驚いた3つのこと

 そんな『のど自慢』の予選会で、『あんぱん』のメイコちゃんが笠置シヅ子の「東京ブギウギ」を歌ったのは、1948年(昭和23年)5月の設定です。この年の1月にレコードがリリースされました。

 8月6日の放送を見て、びっくりしたことが3つ! 1つめは、「浪花節の男性」という役名で、オープニングのテロップに「東家一太郎」と名前を載せていただけたこと。たしかに浪曲師だから浪花節の男性、間違いないです!ありがたや。

 2つめは、後ろ姿 or 遠い横顔で、顔までははっきり映っていないだろうと思っていましたが、アップもちょっとあり、予想以上に長い秒数で放送していただけたこと。浪花亭綾太郎(なにわていあやたろう)の「壺坂霊験記」のひとふしを弾き語りで、後ろ姿のカットから


頃は六月 なかの頃 木立ちの森も いと涼し

 と、うなりきらないうちに、♪カン、カーンとカネ2つ。残念がって席に着く顔がアップで映りました。

 念のため書いておきますが、カネ2つというのはあくまで役ですので、あえて下手にやっております。プロが下手にやるからシャレになります。「一太郎さん、カネ2つだったね」と心配してくださるお客さんがいらしたのですが、演技ですから! 芸人、ウケたら万事オーケーです。

 そしてメイコちゃんが歌うシーンでは、自分が不合格でも他の参加者を応援したであろう人たちの気持ちを表すため、アンパンマンのような笑顔をしようとずっと心がけていました。前日に呑みすぎて顔がむくんでいたという訳ではありません。

 メイコちゃんが不合格になった時には、周りの皆さんと同じように心配そうな演技をしました。これら全部、映っていないと思っていたのですが、芸人根性おそろしや、意外に映っていました。朝ドラのファンの方から、「お芝居が良かった」とお褒めのお言葉までいただけて、感激しました。芝居も浪曲も、役に心から成りきるということは大事なのだなと教えていただきました。

 もう1つ、驚いた3つ目は、8月6日「広島平和記念日」、1945年(昭和20年)8時15分、広島市内に原子爆弾が投下された日に放送だったことです。広島平和記念式典の放送のため、朝の放送は15分繰り上げでした。広島の原爆の悲惨さを描いた中沢啓治先生の漫画作品『はだしのゲン』には、主人公のゲンが浪曲をうなるシーンが何回も出てきます。

 『あんぱん』ののど自慢で、何の浪曲演目のさわりをうなるか?「壺坂霊験記」「佐渡情話」「野狐三次」と3つの候補があったのですが、音楽著作権の関係で、浪花亭綾太郎の「壺坂霊験記」と決まりました。夫婦の姿を描く『あんぱん』に「壺坂」の


妻は夫を いたわりつ 夫は妻に 慕いつつ

 の節の文句はピッタリ!と思っていました。が、放送日は撮影時には知りませんでした。