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『あんぱん』と『はだしのゲン』と『のど自慢』

東家一太郎の「浪曲案内 連続読み」 第4回

『はだしのゲン』が描く人の強さと温かさ

 『はだしのゲン』では、ゲンは父母に知られないように、弟の進次と2人で、街角で浪曲をうなり、聴衆からの投げ銭を集めて、貧しい家計の助けにしようとします。


妻は夫を いたわりつ

 と、ゲンが「壺坂」をうなり、「これ、沢市つぁん。みえない目でそんなにいそいであぶないぞえ~」と語ると、「はいはい」と進次が横で踊ります。聴衆は「うまいぞ」と大ウケ。それを物陰から見ていた父親は涙します。

 家に戻って、母と姉と家族団らんの中でも「壺坂」をやってみせます。貧しい中にも笑いが溢れる中岡家の平和なひととき。しかしその後、原爆の爆風で倒れた家の下敷きとなり、父と姉と弟は、火事で焼け死んでしまうのです。弟や家族との楽しかった時のことを思い出しながら、ゲンがお米をもらうため浪曲をうなるシーンは胸を打ちます。

 8月6日の放送と、『はだしのゲン』ゆかりの「壺坂」が重なったことは全くの偶然ですが、反響の声を多くいただきました。戦後80年の今年、浪曲という芸能を通じた深いご縁を感じました。

 そういえば、2年前に広島市教育委員会が「ひろしま平和ノート」という教材から『はだしのゲン』を削除したというニュースがありました。その理由とされたのが、この浪曲シーンとお金持ちの家の庭の池のコイを盗むシーン。

 「浪曲は児童になじみがなく、コイを盗んでもいいという誤解を与える」とのこと。現代にそぐわないと、知らないところで浪曲がディスられてしまった訳でございます。

 コイを盗むシーンも、病気で死にそうな母のために盗んだと知ったお金持ちのおじさんが、一匹持たせてあげるという、いかにも浪曲的、浪花節的な感動の場面です。先生の簡単な説明があれば、小学生にも十分理解できると思うのですが……。現代に生きる浪曲を精進して参ります。

 小学校の図書室に置いてある漫画は、『火の鳥』と『はだしのゲン』だけだった世代です。『はだしのゲン』で戦争の怖さ、原爆の恐ろしさを教えてもらいました。数十年ぶりに読み返しましたが、中沢啓治先生が魂で書いた、永遠に読み継がれて欲しい作品です。

 ちなみに、この連載のイラストを描いてくださっている原えつお先生は、漫画の学校で、手塚治虫先生に3回、やなせたかし先生には2回教えを受け、やなせ先生はまだアンパンマンを描いていない頃だったそうです。

 最後に、『あんぱん』ヒロインの今田美桜さん。リハーサルの時に少しお見受けしましたが、若いのにとても礼儀正しい素敵な方。すっかりファンになってしまいました! 東家一太郎に「朝ドラ俳優!?」という肩書きもできましたので、また役者の機会をいただいた時に良い仕事ができるよう、本職の浪曲に精進して参りますッ!


戦後のラジオと 浪曲のこと
もっとこの先 書きたいが
ちょっと お長くなりましたで
このあたりと いたします

9月は7日 木馬亭で
一太郎が トリ取って
大河ドラマの 『べらぼう』に
ちなんだ 江戸は吉原の
遊廓企画が ございます
公演情報は ホームページを
ご覧になって くださいませ
次の連載へと お預かり
失礼しました まずこれまで

※9月のピックアップ公演はこちら。ご予約・ご来場お待ちしてます!

江戸吉原遊郭特集

東家一太郎(曲師・東家美)主任で
「夕立勘五郎~吉原高窓出逢」を口演。
15時35分頃からの出演予定です

  • 日程
  •  2025年9月7日(日) 開演 12:15
  • 会場
  •  浅草 木馬亭
  • 料金
  •  2,500円(25歳以下、半額)

東家一太郎 浪曲会 in 東和

浪曲シートン動物記『下町のネコ キティ』
ほか務めます

  • 日程
  •  2025年9月14日(日)
     開演 14:00 開場 13:30
  • 会場
  •  東和コミュニティーセンター会議室
  • 料金
  •  1,500円(前売り) 2,000円(当日)
  • ご予約/お問い合わせ
  •  090-5765-6050

その他、岩手公演
9月15日(月・祝) 14時~ 花巻市大迫
9月16日(火) 午前 遠野市
9月21日(日) 午後 盛岡市 クロステラス盛岡 

その他の公演情報は、下記のURLをご参照ください。

東家一太郎ホームページ

(毎月15日頃、掲載予定)