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真夏の甘美
シリーズ「思い出の味」 第12回
- 講談
扇みたいなのが出ない! スマホ代5万円の謎
でも、食べ物の記憶は不思議なもので、嫌な思い出もあれば、一生忘れられないほど幸せな味もあるのだ。つらい前座時代に、最も美味しかった食べ物の思い出は、横手名物「ドリアン」だ。
出会いは、今から6年ほど前の夏。講談協会には、ここ3年近く若い前座さんが大量に入ってきているが、私が前座の頃は私が一番年下であり、会社員をしていた経験もあったので、パソコンやネット環境・スマホの使い方について「ほんの少しだけ」他の人より詳しかった。
そのため、楽屋では「スマホでわからないことは貞奈に聞くのがいい」ということになり、事あるごとに先生方から質問を受け、スマホ教室さながらであった。
そんなある日、「動画を見ていたら、スマホ代で5万円の請求が来て困っている。家のワイファ(原文ママ)が飛んでない!」と宝井琴梅先生から相談を受けた。「私に解決できるかわかりませんが、一度お宅へお邪魔していいですか?」と、初めて琴梅先生のお家を訪問することになった。
「これがいつも使ってるパソコン!」
先生から示されたものを見て、ビックラこいた。Mac OS 9.2(2001年頃のOS)搭載のMacintosh! そこにWindows 2000(2000年頃のOS)がインスートルされたNECのデスクトップパソコンにHDMI切替器を取り付けて、ディスプレイを共有できるように設定されているのだ。
先生は「ワイファってのはさ、ここに“扇みたいなの”が出るんだろ。ないんだよ」と仰って、ご自分のスマホを見せてくださった。

「先生、私も自分のスマホでWi-Fi(ワイファイ)のSSID(ネットワークを識別するための名前)を探してるんですが、ご自宅のは、いつもどれに繋いでいますか?」
「え? SSIDって何?」
「この一覧の中から、どれか選んでWiFiを繋いでるんですよね? どれだったか覚えていますか?」
「え? 選んだことない!」
「え……? あの……まさか……この家、Wi-Fiが飛んでないんですか?」
「飛んでるって、何が?」
もしやと思い、デスクトップパソコンをよく見ると、インターネットルーターが繋がれているが、そこにWiFiルーターが繋がれていない。なるほど。Wi-Fiが何かをご理解されていらっしゃらないのだ……。
先生の話を総合すると、スマホ代が高いと友人に話したら「ワイファに繋げば、安く抑えられる」と聞いただけとのこと。
「最初にワイファが飛ばなくなったって、言ったじゃん……!」という思いはグっと堪え、そこからプロバイダに連絡したり、モデムルーターの購入を行ったり、後日設定に伺ったりして、なんとか琴梅先生のお宅にWi-Fi環境を設定することができた。