講談への情熱は今も変わらず 一龍斎貞寿(前編)
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第9回
- 講談
瀧口 雅仁
2025/08/28
東京中の講釈師を聴いて辿り着いた、たった一人の師匠
―― 最終的に貞心先生を師匠に選んだ理由はなんですか?
貞寿 入門する前に、前座から真打まで、東京中の講釈師を全員聴いたんですが、自分が目指すなら、貞心先生のような講談を読めるようになりたい、と思いました。師匠は、とにかく女性を演じるのが抜群に上手。読み方に品性があって、特に世話物が素晴らしかった。私が講釈師になるなら、「貞心先生のような講談師になりたい!」と思ったんです。また、古い音源などで聞いていた五代(一龍斎)貞丈先生の読み方が好きで、貞心先生が一番似ていらっしゃると思ったのも理由の一つです。
―― 憧れの講談の世界に入るという思いを果たし、入門してみていかがでしたか。
貞寿 かばん持ちの経験もあって、師匠の人となりはわかっていましたが、他の先生方は客席から見た時、とても怖い人に見えて、はじめは緊張しました。でも、慣れてくるにつれ、憧れの先生方の着物を畳んだり、お茶を淹れたりしながら、捨て耳ではありますが、高座から聞こえる講談が無料で聞き放題! 「楽屋は、なんて素敵なところなんだ!」と思いました。まさにパラダイス(笑)。
褒められすぎた前座、寂しさを知る二ツ目
―― 自分ではどんな前座だったと思いますか。
貞寿 三年近く客席で聴いていたので演目名もわかりますし、師匠のそばにいて着物の扱いにも慣れていたので、それなりにできる前座であったかも知れません。前座って叱られることが多いと思うのですが、私は逆で、前座時代が一番褒められました(笑)。
―― 良い前座の条件は楽屋での気働きができるかどうかと言われますから、人気もあったでしょうね。
貞寿 当時、落語の前座さんが少なかったんですね。そのため、私は講談会だけでなく、落語の会や地域寄席などの前座も数多く務めさせていただきました。また、それをご縁に噺家の師匠方の個人的な会にも使っていただいたりして、結果、修業の機会を沢山いただくことができました。その時、お世話になっていた師匠方と、今でもご一緒させていただくことも多く、ありがたいご縁だったなと思います。
―― そうなると二ツ目になった時には寂しかったのではないですか。
貞寿 当時は二ツ目地獄と言われていたくらい、二ツ目は仕事のない時代でした。勉強会を開こうと思っても、勉強会に適した小規模な小屋もまだなくて、二ツ目を取り巻く環境は今よりも断然厳しかったです。当然、二ツ目昇進は嬉しかったんですが、今後の不安と、楽屋で先生方の話を聞くことができなくなる寂しさとが半々でした。
―― 初高座は覚えていますか。
貞寿 お江戸日本橋亭で開いていた「貞心の会」での『三方ヶ原軍記』です。
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