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〈書評〉 『生殖記』(朝井リョウ 著)

笑福亭茶光の「“本”日は晴天なり ~めくるめく日々」 第3回

深く描かれる人間の心理

 『生殖記』は、人間の掘り下げ方が凄い。一人の人間が考えたとは思えないほど、登場人物それぞれの心理描写が深く掘り下げられ、描かれていない登場人物たちのそこに至るまでの生い立ちまで見えてくるようだ。

 人物が深く描かれているから、発せられる言葉にも真実味が増す。私の「おにぎり嫌い」とは大違いだ。

 ちなみに、おにぎりの由来は「鬼切り」、鬼を退治する際に握り飯を投げつけて追い払ったという民話から来ているらしい。

 舞台上で何も思いつかず、「この世のおにぎり全てが嫌い」と脳で考える間もなく発していた私の顔は鬼の形相だったに違いない。客席からおにぎりをぶつけて追い払ってほしかった。

 正直、好き嫌いが出る作品だとは思う。特にラストへ向かう展開は、賛否が分かれるかも。ただ、私は凄く好きだった。共感できる部分がとても多く、人生に悩んでる人は自己啓発本を読むより、この本のほうが気付きがあるかもしれない。

 久しぶりに読書生活を開始し、とりあえず2025年の本屋大賞から読み始め、今回で10作品全てを読み終えた。この話楽生Webの連載では、『小説』((野崎まど 著))と『魚が逃げた』(青山美智子 著)を取り上げている。10作品もちろん好みはあるが、やはり「みんなが面白い」と選んだものは面白いのだ。名作にハズレなし!

 さて、ここからは何を読もうか。できれば何か縛りをつけて始めたい。皆さんのおすすめもぜひ教えてください!

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  • 書名 : 生殖記
  • 著者 : 朝井リョウ
  • 出版社 : 小学館
  • 書店発売日 : 2024年10月
  • ISBN : 9784093867306
  • 判型・ページ数 : A5判・290ページ
  • 定価 : 1,870円(本体1,700円+税10%)

(毎月29日頃、掲載予定)