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VR体験とは何か

古今亭佑輔とメタバースの世界 第3回

日本のクリエイターたちが描いた感動の舞台

 この試みは、VRの良さを最大限に活かした活動だと自分は考える。

 もちろん神前式を提供するプロの団体ではないため、式の内容自体はあくまで「神前式風」ということが大前提ではあるが、細部まで細かく作り上げ、こだわりを持って実現されたこの活動は本当に美しく、日本のクリエイターたちの強い熱量と想いを感じた。

 残念ながら自分は直接的な知り合いでないため、その結婚式に参列していないものの、そのメイキング映像を観て感動した。半年以上の時間をかけ、大勢のクリエイターが一から全てを作り出し、実際に神前式を行うまでのメイキングであったが、そこには確かに人々の感動や喜びが溢れ、臨場感、現実味が確かにあった。

 新郎新婦の喜び、そして何より日本人ではない参列者の人たちにとっても神前式は初めての経験であり、その感動が画面越しにも伝わってくる。

 さらに、この夫婦はオンラインのゲームを通して出会い、VRChatでコミュニケーションを取る中で交際に発展したという。オンラインで出会った二人がこうして結ばれるとは、人と人との縁の深さを感じる出来事であった。

 VR上での体験は、あくまで擬似的であって、実際の感動体験や経験することよりも劣ると考える人が多いであろう。自分もそうであった。自分のやっているVR上での落語会は、あくまで寄席風の会場に足を運んで落語を聞くという擬似体験であって、実際の落語を観に寄席に行くこととは全くの別物であり、リアルで落語を聞くことに勝るものはないと考えていた。

 自分の提供するコンテンツは、もはや落語ではないのかもしれないが、落語を知るきっかけや入り口になればよいと過去のコラムでも書いている。そして何より、それらの活動は寄席へ足を運んでもらうための導線であり、擬似体験であるべきだと信じていた。