2025年10月の最前線【後編】 (聴講記:日本講談協会定席、講談のオススメ入門書②)
「講談最前線」 第10回
- 講談
- Books
瀧口 雅仁
2025/10/08
講談のオススメ入門書②
9月に公開した第8回の続きになるが、講談のこれだ!という入門書を紹介するのは難しい。そもそも講談に関する本が少ないというのも、その理由の一つに挙げられる。そうした数少ない講談関連の書でも、講談の歴史を紹介するものはどこか取っ付きにくく、だからと言って代々の講釈師に関して追う著や、演目の説明ばかりをあげつらう内容のものも、講談の面白さなり、講談の魅力に迫れるとは思えない。
やはり書き手と内容、そして講談の面白さを同時に感じることのできる著作が入門書としてはベターなのではないかと考える。そこで今回おススメしたいのは、当代一の売れっ子、神田伯山による著『講談放浪記』(講談社)だ。
内容は、都内ばかりでなく、講談に登場する各舞台を巡った、YouTubeの「神田伯山ティービィー」を文字化し、再編集したものだ。例えば、講談でお馴染みの『天保水滸伝』や『赤穂義士伝』、『寛永宮本武蔵伝』に登場する舞台に実際に出掛け、その演目についてのポイントばかりでなく、舞台に実際に立って、伯山がどんなことを体感し、そこからどんなことを描き上げていくべきかを示していく。
上質なエッセイと言えばよいか、講談の楽しみ方を紹介している一冊である。
また、伯山が熱望してやまない講談定席の開亭を目指し、諸文化芸能の殿堂とも言える、歌舞伎座や国技館を訪ねたり、釈場での修業を経て人間国宝に認定された、伯山にとっての師匠である神田松鯉との対談で生きた講談の魅力にも迫っている。
講釈場に関しては、講談協会はお江戸上野広小路亭と新宿永谷ホールに加え、四谷の津の守。日本講談協会も広小路亭と新宿永谷ホールをベースにしているが、当著には出てこないものの、年間数十、または百を超える講談の会を開いている神保町のらくごカフェや、手前味噌になるが、向島の墨亭もまた現代の釈場と言えるので、この著をきっかけに足を運んでもらいたい。
伯山の語りによる、講談の舞台とその魅力ある世界といったものに思いを馳せながら、気になる講釈師の高座に触れてみるのもいいだろう。
(以上、敬称略)
(毎月13日頃、掲載予定)
―― 松林伯知『伯知の日本酒漫遊記 ~酒は“釈”薬の長』シリーズ連載一覧
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