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2025年10月のつれづれ(築港浪曲まつり、万博と木馬亭の熱演、肥後琵琶の調べ)

月刊「浪曲つれづれ」 第6回

未来を照らす新人曲師と京山幸太の奮闘

 後半の音頭は、最後が京山幸枝若、天光軒新月、真山一郎という並びであった。真山一郎は河内音頭の舞台も多く手掛けるだけあって堂々の口演、大いに盛り上がって終わった。

 この浪曲まつりは浪曲親友協会会員が総出で準備し、終演後は片付ける。この中で唯一寂しかったのが、副会長・松浦四郎若の姿がなかったことだ。現在は舞台から遠ざかっていると聞く。

 いつもの年だと、率先して櫓に上がり、電球を吊るしたロープや幕を外すなど人一倍の働きを見せてくれて、その姿を見るのもひそかな楽しみだった。あの誠実な人柄に接する機会がなくなったことを残念に感じる。またお会いできればと思うのだが。

 築港浪曲まつりは、2024年が台風接近のために中止となった。2年ぶりに参加して感じたのは、浪曲親友協会に将来に向けて明るい要素が見えてきたことだ。上に書いたように、2人の曲師がデビューしたということがまず大きい。もう1つ、先輩の真山隼人に負けじと京山幸太が奮闘していることも挙げておきたい。

 京山幸太は来る11月23日、東京のお江戸両国亭で「京山幸太東京独演会-切先-」を開催する。過去にも東京での公演はしているが、今回は初の自主公演である。自身のすべてを見せるべく「三変化」と題して、毛色の違った外題を3つ披露する。

 「任侠」として「血煙荒神山アナザーストーリー『任侠ずラブ』」(作・石山悦子)、最近取り組んでいる「源氏」は「源氏物語『葵』」(脚色・京山幸太)、〆は「義士伝」で「忠臣蔵外伝より『大石と垣見』」である。このうち「任侠ずラブ」は、ドラマ「おっさんずラブ」が話題になっていた時期に初演されたもので、吉良の仁吉を巡る人間関係をBL的に解釈した新作である。文字通り、笑いあり、涙ありの3席になるだろう。

 三味線は前出の新内光希で、今後は彼が相三味線となっていくようだ。前講は、伊丹秀勇の三味線で天中軒かおりである。京山幸太にとっては大事な会になると思うので、ぜひ応援いただきたい。