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2025年10月のつれづれ(築港浪曲まつり、万博と木馬亭の熱演、肥後琵琶の調べ)

月刊「浪曲つれづれ」 第6回

漂泊の調べ、肥後琵琶と浪曲の秋夜

 最後に1つだけ宣伝をお許しいただきたい。来る10月14日(火)夜、アートスペース兜座にて杉江主催で「肥後琵琶・浪曲競演秋の会」という会を予定している。

 琵琶にはさまざまな流派があるが、漂泊芸の名残を最も色濃く残すのが、熊本県を中心に演じられてきた肥後琵琶だ。軒付けの芸であり、他の琵琶に比べても楽器が一回り小さい。背中に負って歩く前提だからである。演目には荒神祓いなどの神事も多く含まれている。

 現在の肥後琵琶継承者は西日本にわずか数人、そのうち、故・山鹿良之に教えを受けたこともある後藤昭子と、その門下の岩下小太郎が来京してこの会に出演する。浪曲側の出演者は天中軒すみれと、曲師・沢村理緒である。

 後藤昭子の演目は「小栗判官 照手姫流転の段」との予告が出た。いずれの演目であっても、おそらくは他にはない近世の息吹を感じられるものになるだろう。この機会にぜひ。

(以上、敬称略)

(毎月9日頃、掲載予定)