NEW

ミャクミャクに翻弄される日々

「ラルテの、てんてこ舞い」 第4回

果てしない行列の、その先にあるもの

 その日は、幸いにも曇天だった。けれど、蒸し暑さは度を超えている。

 初めて乗る大阪中央線。「弁天町」という駅で乗り換える人々は、ほぼ万博へ行く観光客で違いないだろう。気のせいか、お客さん、それぞれの顔が上気しているように思う。

 2駅で終点だが、電車内のアナウンスで「次は、ついに、夢洲(ゆめしま)、夢洲です」と流れる。長年生きてきたが、車内アナウンスで「ついに」というフレーズは聞いたことがない。これはあんがい、新鮮だった! 変なところで感動する。

 夢洲駅を出ると、遙か向こうに入場ゲートがあるが、そのだだっぴろい敷地内は驚愕の人間の数で溢れている。とにかく並ぼう。並ばないと入場すらできない。といっても前に進むのも牛歩のあゆみである。ほぼ全員が日傘を射しているので前がどのくらいなのかまったく見えない。

 慣れたもんで、横に並ぶ大阪ファミリーは、皆それぞれに簡易椅子を取り出し、長期戦の構え。お母さんもおにぎりを出し、「ほな、今のうち食べとき」と待機中の時間もご飯タイムとして楽しんでいる。

 方や一方、カップルと見られる若い二人が不機嫌な顔をしている。わかる、わかる。暑いし、待たされるし、そりゃあ不機嫌にもなるだろう。

 とはいえ、おもむろに怒りを声に出せないし、長い付き合いならまだしも、付き合い始めなら、そうそう勝手なこと言って嫌われるのもなんだし、喧嘩もしたくないし……ってなところで、お互い我慢比べなのだろう。

 あの二人、別れないといいな、などと勝手に妄想したりする。まぁ、そう考えると行列時の人間ウォッチングは楽しいかもしれない。

 そんなかんなで、約1時間ほど待たされた。

 東ゲートを入るとすぐに、ミャクミャクのモニュメントに出会える。ディズニーと違って、キャラクターが沢山歩いてるわけではないので、大きなミャクミャクに会えると、なんだか希少なものを発見した感があって、少しドキドキする。

 やっと会えたね、という感じ。

ミャクミャクのモニュメント