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二つの乳に育てられし

シリーズ「思い出の味」 第13回

お豆腐10丁を運んだ日

 落語家になってからは、料理好きの笑福亭生喬師匠がうちのおからを気に入ってくれ、料理と落語の会で使ってくれたこともあります。

 自営業なので定年はないのですが、2018年、母が「もう疲れたので、そろそろやめよう」と言い、お店を閉めることになりました。

 記念に落語会を開催し、お客様にお豆腐とおからを食べていただきましたが、実家から会場にお豆腐10丁を持っていくのがえらく大変だったのを覚えています。

最初の豆腐店。母、兄、私

 朝の、揚げたての絹揚げと豆乳、そして、修学旅行で食べた『おからの炊いたん』、同じ料理や食品はあるけど、あの味を二度と味わえないと思うと寂しいです。

 これからも、一食、一食、口にするものはダイズ(大事)に味わっていこう、それが人生を彩るのではないかと思います。

落語家・月亭天使公式サイト

(了)