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鑑真和上

「くだらな観音菩薩」 第6回

すべてがつながって、今ここにいる

 私も、福岡のイムズホールで師匠・木久扇に弟子入りのお願いをした時のことを思い出すと、胸がキュッとなります。

 好きな人にプロポーズするような感覚、と言えば分かりやすいでしょうか。愛の告白みたいな。でも少し違うかな。自分の人生を賭けて、自分のことを知らない人に「弟子にしてください!」ってお願いに行くんですもんね。やっぱり、ちょっと違うかな。

 普通なら嫌ですよね。知らない人が真剣な顔して近づいて来たら、「何だチミは? 金ならないぞ!」って追い返すでしょ。でも、それを考えると、何でもない若者を弟子にして育ててくれたんだよなぁ。ありがたいです。師匠、改めてありがとうございます。

 変なスナックの噺で、連日寄席を満席にできる芸人になりました。わーい、わーい。まぁ、皆さんと企画のおかげですけど、わーいわーい。

 噺家は、自分も弟子に取ってもらえたからこそ、弟子を取ることが師匠や落語界への恩返しの一つになるんじゃないかなぁ。落語家の世界は、素敵な世界だと私は思ってますよ。

 そういえば、兄弟子の林家彦いちが、私が入ったばかりの頃に言ってくれた言葉があります。

 「噺家は、本当になりたい気持ちがあるなら誰でもなれる。大変なのは、辞めずに続けられること」

 なぜか凄く覚えてるんだよなぁ。入りたての私にとって、とてもありがたい言葉だったなぁ。「辞めないことが大事」って言葉に支えられて、つらい前座修行に耐えられたこともある気がします。

 私は、人生とは必然で、どんな状況でも何かがつながっていると思うんです。

 噺家になる前にプー太郎をしながらフラフラしてた時代、一年待たされて入ったことで同期になった仲間たち、師匠を選んで兄弟弟子になった皆さん。会わずに済んだなら、会いたくなかった白鳥師匠。よく遊んでもらって、尊敬していたけど、尊敬の気持ちが全くなくなってしまった獅堂師匠との日々。

 すべてが必然で、すべてのことが今の自分を作ってくれている。そう思うと、感謝の気持ちを持って毎日が過ごせます。そして、つらかった時代も素敵な時代に思えて来ます。今があるのは、そのおかげだと。