日常を鮮やかに描く言葉の力 神田茜(中編)

「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第22回

失敗談こそ面白い

―― 新作講談を作る時に何かポイントはあったりしますか。

 何もありません。自分が経験したり、仕事で失敗したことを講談にしています。でも、最近は講談っぽい語り口調を入れるように意識しています。あとは以前に作ったものを今風に置き換えて、今の自分のものにするといったことでしょうか。そういえば、最近、ある人物を講談にするという話をいただくようになりました。

―― どんな話を作ったんですか。

 私の出身地である帯広を開拓した依田勉三(よだべんぞう)という人がいるんですが、その人の一代記です。これは作っていて楽しかったです。一人の人物を今まで語られることのなかった視点で、しかも良い点だけでなく、失敗談を描くのが楽しかった。実在した人物の歴史というと、どうしても英雄史になってしまいがちですし、地元の人もそれを望みがちですが、悪い部分もさらけ出す。そんな新しい一代記です。

―― 真面目ばかりの生き方をした人の話は面白くないこともありますし、そうした失敗談から人間味が出てくると思います。

 その方が面白いじゃないですか。今もまた一人頼まれているので、面白おかしい話にしようと思っています。

―― これまで作ってきた話で好きな演目はありますか。

 う~ん……。

―― 私が大好きなのは、最初に衝撃を受けた『ふとももムチムチ』(笑)

 あれは銀座でホステスをしていた時の話です。話の中に出てくるホステスが「水割り製造機」と呼ばれていたのは実話です(笑)

―― あとは『小さな恋のメロンディ』も、何度聴いても切ない。

 あれは事務員をやっていた時の話です。

―― やはり経験談に即した話が多いですね。先にお尋ねした入信していた時の話が『いじめていじめて』でしょうか。

 あれは一人暮らしをしていた時に、街中でふと感じたことを描いたものです。『占い師ハナコ』が宗教の時の話ですね。

―― 他にも『あの頃の夢』に、『今佐の恋の物語』、『弱虫たちの啖呵』といった、タイトルだけ聴いても楽しくなるような話がありますね。

(以上、敬称略)

神田茜X(旧Twitter)

「きょうのせつなかったこと」(ブログ)

後編に続く)