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早朝寄席のこと

「お恐れながら申し上げます」 第6回

泣きそうになりました(嘘)

 日曜日の朝に支度をしようと早めに楽屋入りすると、二ツ目の兄さん方が楽屋にいらっしゃいました。

 「この人たちは何をやっているんだろう」と訝しみました。楽屋に手伝いに来てくれた奇特な方々なのかなと淡い希望を抱いたりもしました。もちろん、そんなことはありません。まさしく、早朝寄席の真っ最中でした。その時の和気あいあいとした楽屋の景色を覚えています。

 二ツ目になって分かることですが、会おうと思って動かないと人に会わなくなります。前座の間は、毎日寄席で働いておりました。師匠、先輩方はもちろん、前座仲間とも毎日のように顔を合わせる日々です。ところが、二ツ目になると一緒に前座をやった仲でも全く会わなくなる人が出てきます。

 個人で行く仕事、師匠方のお供をさせていただく仕事、二人会、三人会などお会いする人は、だいたい決まってきます。「あの人は今、何をしているんだろう」と思いを馳せることはありませんが、会えないというのは寂しいものです。そんな時に早朝寄席で久しぶりに顔を合わせる先輩や、後輩たちと話が弾むのも当然のことで自然と明るく楽しい楽屋になっているんだなと、今だから分かります。

 前座の頃は、楽しそうな兄さん方を横目に着物をたたんでましたので、そんなことを考える余裕はありませんでした。ただただ、うらやましいなと思っておりました。

 その気持ちがあふれ出ていたのでしょうか。ある兄さんが「1人でやってるの? 大変だね」と声を掛けてくださいました。嬉しかったです。前座、それも一番下の前座として当たり前のことをやっているんですが、優しい言葉を掛けていただいたことに思いが込み上げてきました。泣きそうになりました。嘘です。言い過ぎました。すいません。嬉しかったのは本当です。