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〈書評〉 現代語訳 風姿花伝・三道 (世阿弥 著・岡田利規 訳)

「芸人本書く派列伝 クラシック」 第11回

〈書評〉 現代語訳 風姿花伝・三道 (世阿弥 著・岡田利規 訳)
杉江 松恋

執筆者

杉江 松恋

執筆者プロフィール

現代に通じる室町時代のパフォーミング・アーツ

 今回取り上げるのは、『風姿花伝(ふうしかでん)』である。

 え、『風姿花伝』。

 そう、『風姿花伝』。15世紀初めに世阿弥(ぜあみ)が書いた、能の理論書として名高い『風姿花伝』。

 この連載は〈芸人本〉のうち〈クラシック〉を紹介するものだから、ちゃんとルールには則っている。大丈夫。

 いやいやいや、いくらなんでも600年近く前の本はクラシックが過ぎるだろう、という読者の声が聞こえてくるようである。もちろん、古めかしいものを無理に読んでもらうつもりはない。

 現代に通じる普遍性、そこには気づかなかった、という視点の新しさがあるからあえて紹介するわけである。ここで取り上げるのは、現代語訳の『風姿花伝・三道』(河出書房新社)だ。訳したのは演劇カンパニー〈チェルフィッチュ〉を主宰する演劇人であり、小説家としても2022(令和4)年の『ブロッコリー・レボリューション』(新潮社)で第35回 三島由紀夫賞と第64回 熊日文学賞を受賞している岡田利規(おかだとしき)である。

 あとがきから先に紹介してしまう。演劇について感じている小さな違和のようなものを考えて試行錯誤することが、演劇に取り組む上での基礎になっていると岡田は言う。十年以上前に岡田は「大抵の演劇に対してわたしが抱いてしまう違和感を能は衝撃的なまでに含み持っていない」ということに気づき、演劇的試行の際の大きな参照の泉とするようになった、というのである。そうしたことから依頼があり、実現したのがこの現代語訳だ。

 本書には世阿弥が記した最初の伝書である「風姿花伝」と、それに続く書の1つである「三道(さんどう)」が収録されている。岡田は簡潔にこう紹介している。

 では、どのように「演じること」について書かれているか。

 たとえばパフォーマンス、という訳語を岡田は用いているのだが、神事の一環であったり、高貴な人たちの前でそれを行うというようなときでも、観客が多数押し寄せて会場がなかなか静まらないようなケースがある。どうするか。