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4月23日は、ビールの日 →謎の激安物件へ引っ越した男の酔狂

「エッセイ的な何か」 第11回

 話は変わるが、僕が噺家になるべく上京し、初めて住んだアパートが北上野の二畳半のアパート。

 二畳半……。今考えると、わけの分からない間取りである。

 師匠には、呼ばれたらすぐに駆け付けられる距離に住めと言われたのだが、何しろ上野近辺は家賃が高い。探した挙句に、もう当時の経済状況で住めるような所がここしかなかったのであった。

 このアパートにも色々思い出があるのだが、それは別項に譲るとして、二年住んでいると手狭になってきた。……まあ、当たり前か。二畳半だし。

 そこで引っ越しを決意する。だが場所がここ近辺で、家賃も同等、それでいてもっと広い部屋などあるわけがない。

 ……と思ったら、あった! それも、元のアパートから150メートルぐらいの所に。間取りは、玄関、リビング、六畳間、風呂、トイレ、収納まで付いて1万2千円だったか。

 いや、安すぎる! 絶対何かある!――

 案の定、ガチガチの事故物件だったことが数年後に発覚するのだが、贅沢は言っていられない。ここに引っ越すことに決めたのは良いが、引っ越し屋さんを頼むような金もない。まあ、近いのが幸い、一人で少しずつ荷物を運び出していた。

 そこで分かったのだが、この引っ越し先がほぼ廃墟。

 運搬作業中も、誰にも会わないなーと思っていたのだが、当たり前である。誰も住んでいないのだから。

 エレベーターもない古いビルで、少しずつ五階まで昇ったり、降りたりして荷物を入れていた。しかし、難しいのは冷蔵庫などの大きな荷物。これはさすがに一人では運べない。

 そこで登場するのが、件の桃之助さんである。ビールを好きなだけ飲ませるからと頼んだところ、二つ返事でオーケーしてくれた。もとのアパートから冷蔵庫を運び出し、道路を二人がかりで移動。

 もう、端から見れば、単なる家電泥棒である。