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なぽりたんといっしょ
「ずいひつかつどお」 第10回
- 落語
立川 談寛
2026/05/04
喫茶店におけるナポリタンには美味しさだけではない、“何らかの情緒みたいなもの”がある。ソーセージ、玉ねぎ、ピーマンがお皿の上でフォークソングを歌うごとく、見事なハーモニーを奏でている。しかし、油断してはいけない。かぐや姫の神田川のような雰囲気を漂わせておきながら、もちもちとした麺、つまりは炭水化物で殴りかかってくる。突然のロック。Mamma mia, Mamma mia(マンマミーア・マンマミーア)と叫び出す。つまり、ナポリタンはボヘミアン・ラプソディなのである。
さらには欠かせないのが粉チーズ。これをかけるとどんどん曲が変化する。かければかけるほど美味いのが粉チーズ。そして最後にタバスコを振りかけて曲が完成するのだ。一体なぜ、ナポリタンにタバスコなのかはわからないが、合うものは合うのだからしょうがない。何が言いたいのかというと、ただ美味しいだけではない、“お皿の上に哀愁や郷愁を感じさせる”のがナポリタンなのである。
二ツ目になりたての頃だろうか。よく上野広小路寄席の帰りに、御徒町にある『スパゲッティのパンチョ』でナポリタンを食らっていた。それも大盛りにして、詰め込めるだけ腹の中に詰め込んでいた。喫茶店のは確かに格別に美味いが、パンチョの大雑把な味も好きだった。
30代の後半に差し掛かった頃、広小路寄席が終わった帰りに御徒町のパンチョに入った。いつものように大盛りにしてナポリタンを頼み、喜んで食べていたのだが、急にお腹に入らなくなった。その瞬間に思ったのだ。何のために大盛りにしているのだろうと。苦しくなるまで大盛りにして腹の中に詰め込んでどうしようというのか。美味しく感じる量を食べればええじゃないかと。その日以来、外食で大盛りを頼まなくなった。大盛りを頼むことで、何か自分の心に“虚しさ”を感じたのかもしれない。
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