〈掲載記事400本記念〉 上方講談の伝統を未来へ繋ぐ、継承者にして開拓者 旭堂南華(中編①)
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第35回
- 講談
瀧口 雅仁
2026/05/01
今からン年前の南華(『上方芸能』131号より)
一時期、絶滅危惧種とまで言われるも、現在、東西合わせて120名を超えるまでになった講釈師。江戸から明治、大正、昭和と、主に男性が読み継いできた芸であったが、平成、令和と時代を経て、女性目線による女性の講談が世に送り出されてきた。その時、講釈師は何を考え、何を読んできたのか。第一線で活躍する女性講釈師に尋ねてみた。〈旭堂南華(きょくどうなんか)先生の前編/中編①/中編②/後編のうちの中編①〉
ふろふき大根と「辞めたらあかんよ」の一言
―― ご出身が梅花女子大(大阪府茨木市)だと、荻田清先生もいらっしゃいますし、何か古典芸能を学んでいたとかではないんですか。
南華 国文科でしたが、そういうことはありませんでしたね。荻田先生は四代目南陵と親しかったので、「この間、古本屋を一緒に巡って来た」とか、そういう話を耳にしたことはありましたが、ゼミを取ったとか、そういうのはありませんでした。
―― 師匠である三代目旭堂南陵の一番の教えはどういったものでしたか。
南華 よく言われたのは、“ちゃんと聞いて、ちゃんとやる”というので、師匠の稽古いうのは、点取りみたいな、大学ノートに書いた自分のマル秘ノートをお経のように読むだけなんですよ。なんの抑揚もつけずに、それを聞いて自分で考えてやれ。だからみんな同じネタをつけてもらってても、やり方が違うから、全然違うものになっていくというものでした。口移しで、“あれはこう”、“これはそう”とやっていけば上達も早いと思うし、教え方としてはとても良いやり方かと。でもそういうのが全くなくて、わからんところがあっても、自分で考えてやるんで、時間はかかるんですけど、それをできるようになったら、自分で書いて作るとかしやすくなるというか。ネタはつけてくれはるんですけど、口調を教えてもらうとかもないんで、袖で聞いたらわかるやろって言われました。
入門して一年ぐらいで、修業がきつかった時期があったんですよ。師匠の奥さんは亡くなりはっていて、師匠も家でゆっくりしている頃なんですが、私はそれまでお酒を飲む人たちと付き合いもそんなになかったですし、うちの父親が全くお酒を飲まない人だったんで、うちの師匠は朝10時ぐらいから夜寝るまで飲むような感じやったんで、打ち上げとかもありましたし、忙しいこともあって、しんどかったんです。ほんなら十二指腸潰瘍になって、師匠も奥さんがいなくなったんで、私が里芋を焚いたり、おかずを持って行って、一緒にご飯を食べたりしていたんですが、そしたら「ふろふき大根の作り方教えてくれ」言うてきはって、それを書いてたら「辞めたらあかんよ」。その時に辞めそうな顔をしてたんでしょうね。
「辞めへんかったら続く」というのを聞いて、「ああ、辞めへんかったら続くんや」思うて、「辞めたら終わり」いうのは、よう言うてはって、自分もなんべんも辞めてやろうかと思ったいうような話もようしはりました。「辞めへんかったら続く」ってあたり前なんですけど、「嫌になるな」みたいなことは何遍も言われたことがありますね。師匠は明るくて楽しい人やったんで、「お客さんが楽しみにして来てくれるんやから、楽しんで帰ってもらわないかん」と、よく言うてはりました。
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