〈掲載記事400本記念〉 上方講談の伝統を未来へ繋ぐ、継承者にして開拓者 旭堂南華(中編①)
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第35回
- 講談
瀧口 雅仁
2026/05/01
善悪は必ず報われるという信念
―― これまた全段聴いたような心持ちになりました。しかし、ラストの締め方は理にかなっていて、これまた面白い!
南華 やっぱりね、今時じゃないんですよ、その終わり方が。昔であれば、主君のために子どもの首を打つとか、そんなんはよくあります。でもそこに共感があんまりない。歌舞伎でも多いけど、私はそういうのが好きでないんです。子どもは自分の所有物という感覚ではないですか。それがちょっと嫌なんで、『シン・傾城阿波の鳴門』はそういう終わり方にしたんです。やっぱり女の人にはウケますね。
―― 女性が共感できる作品になっていると思います。
南華 共感されますね。やってて面白かったです。
ここに登場する『近松半二の死』と『傾城阿波の鳴門』のあらすじは、南華が説明している通り。前者は岡本綺堂が「文藝春秋」の昭和3年(1928年)10月号に発表した戯曲で、後者は近松半二、竹田文吉、八民平七の合作で、1768年(明和5年)初演の時代物の狂言である。内容を補足すると、徳島藩のお家騒動に端を発した物語で、主君の宝である名刀国次を取り戻す旅に出る十郎兵衛・お弓の姿と、高尾太夫に惚れ込み、公金横領をする小野田軍兵衛の物語が交差するストーリーである。
―― では、これから読もうと思っている話はありますか。
南華 まだ行ってないんですけど、(神田)陽子先生に「牡丹燈籠」の『栗橋宿』(くりはしじゅく)をつけてもらいたいんですよ。今度お願いしようと思っています。
―― 夫婦の情愛が変じて……と、先生がお読みになれば面白いと思います。
南華 一回ね、文学座が新宿のサザンシアターで『牡丹燈籠』をやった時に、陽子先生の同期の方(富沢亜古。2025年9月の神田陽子インタビューに登場)がお峰の役で出るのと、陽子先生がトークゲストで出るから見に来る?と言われて、連れて行ってもらったんです。その時の芝居が面白かったから、あれを習いたいなあと。『お札はがし』は、陽子先生に習ってよくやってるんですけど、その続きをやりたいな思うてます。
―― 最後に土手に行って、伴蔵が女房のお峰を殺す場面が迫力があるので、それを南華先生で聞いてみたいですね。って、何だか人を危める話ばかりしている(笑)。
南華 因果応報な話がまた好きなんです。『桜姫全伝曙草紙』(さくらひめぜんでんあけぼのぞうし)とか『復讐奇談安積沼』(ふくしゅうきだんあさかのぬま)とかを続き読みでやっていたんですけど、そういう“悪には悪報が、善には善報が。今はまだ来ないのは、今がその時じゃないから”っていうのが好きなんです。絶対やったことは返ってくるよという話がね。
次回の〈中編②〉では、南華が挑む『南部坂』の新解釈と、笑いと涙を自在に行き来する語りの核心に迫る。現代ネタを織り込みながらも古典の情感を損なわない工夫とは何か。さらに、若い世代に通じにくくなった「忠臣蔵」をどう届けるのか、その試行錯誤と現場のリアルな反応も明かされる。講談の“今”が見えるインタビュー。
(文中、敬称略)

▼旭堂南華(なみはや講談協会 公式ホームページ)
▼旭堂南華 X
(中編②に続く)
前回はこちら
編集部のおすすめです(神田陽子先生へのインタビュー)
―― 瀧口雅仁『釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編』連載一覧
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