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流麗にして弁舌 一龍斎貞鏡 (中編)

「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第2回

親子での共演

――思い出の高座はありますか。

貞鏡 やっぱり初高座ですね。上野広小路亭で、目の前に本を置いて読んだんですが、そこに言葉が書いてあるにもかかわらず、真っ白になってしまいました。極度のあがり症なんです。でも高座に上がって、マクラを振って喋っていくと段々と楽しくなってきて、お終いにはたまらなく楽しくなっているんです。これは子ども達にも遺伝していて、学校とか幼稚園に行くまでは「行きたくない」と言っているくせに、いざ学校へ行くと楽しくなっちゃうみたいです(笑)。

――貞鏡さんがまだ前座の頃、黒門町本牧亭で前座勉強会があったんですが、その日、何かの会か催しがあるということで、他の前座さんが出払ってしまっていて、それでも会は開かなくてはならない。どうしようかと思っていたら、家で寝ている人がいたので連れてきましたと、思わぬ形で親子会になったことがありました。

貞鏡 覚えています! 父が甚五郎を読んで、父の日が近かったので、私は『柳生二蓋笠』を読んだんですよね。その日に頂戴したなけなしのお給金で、師匠に甚兵衛を買って、それが初めてのプレゼントだったんです。

――いい話だ……。

貞鏡 それを一番の思い出の高座にしておいてください(笑)。

筆者が席亭を務める墨亭で撮影した高座姿
(「講談師 七代目 一龍斎貞鏡」ホームページより)