流麗にして弁舌 一龍斎貞鏡 (中編)
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第2回
- 講談
瀧口 雅仁
2025/05/30
師匠の思いを引き継く
―― いずれ、高貴でしっとりとした話も聞いてみたいですね。
貞鏡 私も勉強したいです。「義士伝」の中では『千葉の槍』が好きなんですよね。普通であれば首を斬られそうになった時に、「と、そこへ駆け付けてまいりました◎◎が、間一髪のところで助けてくれた!」となるんですが、この読み物は救世主が現れずに、スパッと斬られてしまう。最初に聴いた時にビックリしましたが、師匠の『千葉の槍』がとても良くて、ああいう読み物も好きですね。
―― では、一番に取り組みたいことは、自分のキャラクターを活かしながらも、一龍斎の、そして八代目貞山の芸を引き継いでいくということですね。
貞鏡 これまでダラダラやってきたという訳では全くないんですが、師匠が亡くなって、ハッとして自分の身の振り方を考えさせられました。師匠も、ご自分でもここで亡くなるとは思ってなかったんでは……とも思いました。師匠の最期にはコロナ禍であったので、立ち会えなかったんです。
師匠からも「俺のことはいいから、腹の中の子どもを大切にしろ」と言われて……。だから師匠が思い残したことを、私が引き継がなくてはならない。それに人生何が起こるかわからないので、教えていただきたい演目はすぐにダメもとで先生方へお願いするようにしました。
―― 今後、取り組んでいきたいことはありますか。
貞鏡 今は高座の時間と子ども達との時間を両方大切にしたいですね。日によっては、携帯を見る時間もない位で、平日も育児と家事が終わるのが10時位なので、そこからお迎えの時間が17時なので、16時までに終える仕事しか、原則お受けできないのが現状なんです。
30歳で結婚して、32歳で初産、そこから34、35、37、39で五人目と、この9年間でガラリと生活が激変したんですが、今が一番高座が楽しいんです。だから高座に上がりたいという気持ちは強い。
SNSとかを見ていると、同輩達が色々な会に出ているのを目にして、私はこれでいいのかと思うことは正直言ってあります。だけれども、今は子ども達と夜ご飯を一緒に食べたい。食べさせてあげたいんではなくて、私が一緒に食べたい。高座に関してもまだ体力が持たないので、この稼業は一生続く長いものなので、今無理して、身体も心もボロボロになってしまうより、今はできる限りのことを精一杯やらせていただきたいと、長い目で考えています。
あらすじの話ばかりを追うようだが、貞山が得意にし、貞鏡がその一席に選んだ『千葉の槍』は、伊勢参りを思い立った千葉友之丞が、先祖代々の槍を中間の市助に持たせて出発する。その旅の途中、手違いから槍を岡田軍右衛門という武士に取られてしまい、千葉は返して欲しければ市助の首を持って来いと言われ、苦渋の決断を取るといった話である。
(以上、敬称略)
▼「講談師 七代目 一龍斎貞鏡」ホームページ
(後編に続く)
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