君は『浪曲天狗道場』を知っているか
「浪曲案内 連続読み」 第5回
- 浪曲

東家 一太郎
2025/09/15
浪曲界のカリスマたちが繰り広げた至高のエンタメショー
1954年(昭和29年)10月26日火曜日、練馬公民館で録音された初回放送。毎日新聞のラジオ欄には、こう書かれています。
浪曲てんぐ道場。新番組。素人の浪曲物まねのど自慢番組で、前田勝之助の道場に入門する希望者のテスト風景という形式をとる。受験者は一人約一分半ずつ口演し、前田勝之助がそれに批評を加え、木村重松が入門の可否を決定する。
放送時間は、火曜の21:10~21:40。参加出場者は、まず入門の試験に合格してから、初段から九段まで進む形式で、賞金もありました。後年には勝ち抜き制が導入され、「師範代」と称するチャンピオンと、その週の最高成績者が番組の最後に対戦し、勝者が「師範代」の称号と賞金を得る、という構成になります。
1955年(昭和30年)から1960年(昭和35年)まで民間放送ラジオ聴取率のトップを占め、1回分の出場者6名に対し、応募者が週に500名を超えたほどの人気番組。1955年1月には大映により『浪曲天狗道場』のタイトルそのままで映画化、公開されました。放送時間は、のちに月曜の20:00~20:30に変わり、1965年(昭和40年)6月28日の最終回まで、実に11年間も放送されます。
指南役・前田勝之助と、審判・初代相模太郎のコンビが人気だったそうです。前田勝之助は浪曲師ではなく、浪曲物まねの第一人者。私の師匠もお世話になったそうです。相模太郎は、正岡容作の滑稽浪曲『灰神楽三太郎』で一世を風靡した浪曲師。
横浜関内にある放送ライブラリーで、1964年(昭和39年)6月1日放送の『浪曲天狗道場』をなんと!30分すべて聴くことができます。
番組も末期ですので、指南役となった相模太郎一人で批評、審判していくのですが、相模太郎師匠の話しぶりが、浪曲の灰神楽そのまんま。江戸弁で歯切れよく、歯に衣着せぬ批評、茶目っ気たっぷりで味のある語り口。この師匠は普段からこんな感じの人だったのかと、勉強になりました。
最初の入門者は、江東区深川豊洲で鮨屋を営む高根さん、61歳。池谷アナの司会で、ご商売の世間話から始まりまして、まず“入門試験”は、初代篠田実の『紺屋高尾』。
遊女は客に惚れたと云い……嘘と嘘との色里でぇー
と唸ると、相模太郎師匠が「サビが効いてんなぁ、うまいなぁこれ」。ドーンドンドンドンドンと入門合格の太鼓。
次は“初段”に挑戦、木村重松の『越後騒動』。
一方は低く一方は高く よろめきながらもかかりくる
と唸れば、「ちょいとまったー!」。これがこの番組の名物。相模太郎の名ゼリフ。続いて「これは鮨屋の旦那、あれでしょう、重松御大(おんたい)の、晩年の重松っつぁんですね。そうでしょう、それなら合格だ、これは」。ドーンドンドンドンドン、と初段合格。
「もう少しね、御大の若い時分のは、もっと吟(ぎん)のあって引っ張る声があったわけですね。ちょっと握り方が柔らかかった。あがり(お茶)もらわなきゃおっつかないよ、こりゃぁ」と、批評はプロならでは、かなり細かいです。
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