君は『浪曲天狗道場』を知っているか
「浪曲案内 連続読み」 第5回
- 浪曲
東家 一太郎
2025/09/15
浪曲の「素人のど自慢番組」がラジオを席巻した時代
続いて“二段”は、東武蔵の『羽賀一心齋』。天狗道場出場者は、かなりの浪曲通、寄席やレコードで浪花節、浪曲を聞き慣れた人たちなのです。
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百姓姿に身をやつし……着いたところが箱根山
と、ここでまた「ちょいとまったー!」
「武蔵先生、中気になる前だな、これは」
「そうです」
「そう? 中気になる前! 前なら合格だこれ」
ドーンドンドンドンドン。池谷アナが「高根さん、病気になる前とか晩年とか、そういうのばっかりおやりになりますね」と云えば、「どうもそういう人が好きでね」と鮨屋の親父も粋なもんです。
高根さんは、続く“三段”を合格したところで、「あがりでも飲んで、これでお勘定にします」ということで、御免状(ごめんじょう)三段と、賞金五千円。大正製薬の強力ダマリンをもらいました。ちなみに不合格になった人には、「わらじ銭、差し上げてください」ということで五百両(円)と強力ダマリン。
番組構成の素晴らしさと、指南役、審判のキャラクターと上手い廻し、参加者の人となりも興味深く聴くことができ、最盛期の聴取率23.8%の超人気番組だったというのも頷けます。色々な浪曲を出場者が唸りますので、名人の達者な曲師が二人体制で三味線の調子を変えながら、進めていくのもなかなか大変だったと思います。
浪曲素人のど自慢番組の先がけは、『浪曲天狗道場』よりやや古く、1954年(昭和29年)2月25日に始まった日本文化放送の『浪曲学校』。司会・木下華声、審査員は東家楽遊、東武蔵から東家菊燕、春日清鶴と代わり、4年間で終了しました。
『浪曲天狗道場』の前身番組は、同じ年の4月7日にラジオ東京で始まった『素人浪曲のどくらべ』。こちらは司会が芥川隆行。審査員に私の大師匠・東家楽浦、三門博、正岡容、小島貞二など。
『浪曲天狗道場』の大ヒットにより、1956年(昭和31年)には同じ趣向の番組が次々と現れ、NHK『なかよし浪曲会』、ニッポン放送『のど比べなんでも大学』、日本文化放送『浪曲歌合戦』と最大5番組が鎬(しのぎ)を削りました。
私の師匠、二代目東家浦太郎は、1955年(昭和30年)4月の入門。13歳の少年は、三ノ輪に住んでいた東家楽浦の内弟子となり、中学校に通いながら東家浦清の芸名で浪曲の舞台に立ちます。「師匠はまさに、ラジオ浪曲全盛時代の申し子だったのだな」と調べながら感心しました。
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