言霊のブーメラン
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第3回
- 落語
桂 三四郎
2025/09/25
悲しきモンスター
そんな僕が先日、後輩と打ち上げに行った時に
「いや、昔の先輩の武勇伝とか芸談とか、初めての顔して聞くのほんま大変やったで~」
という話をしてたんだけど
僕の話を聞いている後輩の表情を見て気がついた。
「あれ? もしかしてちょっとめんどくさそうに聞いてる?」
「今、ちょっとあくび噛み殺さんかった?」
「今、ちらっと時計見んかった!?」
そう、いつのまにか僕自身が
「打ち上げハラスメンター」になってしまっていたのだ!!
ハラスメントは、加害者側に自覚がないことが多いとは聞いていたけど
まさか自分が打ち上げハラスメンターになっているとは!!
しかも、打ち上げ座持ち力が高かった分、見え透いたお世辞やヨイショを信用しない猜疑心も持ち合わせているので、タチが悪い。
後輩にできることは、ただただ微妙な顔で相槌を打ち続けることだけ!!
初めて聞いたかのようなリアクションや大袈裟な笑い、絶妙な合いの手は全て僕に見透かされるよ!!
そして僕は決してそれを許さない!!
なぜなら、それは僕が今まで諸先輩方にやってきたことだからだ!!
あまりにも上方落語の打ち上げに参加しすぎて座持ちがうまくなりすぎ生まれた
悲しき「打ち上げモンスター」
それが今の桂三四郎だ!!
前座時代の持ち回りの要領の良さが災いして、後輩との打ち上げを心から楽しめなくなってしまったのだ。
全ての後輩の打ち上げでの発言から、嘘の匂いがしてしまう!!
「ニイサン、サスガデスネ!!」
「エー、ソンナコトアッタンデスカ!!」
「イマデハ、カンガエラレマセンネ!!」
それは、僕が今までこんな言葉を駆使して諸先輩方の前で心なきリアクションを続けてきたからに他ならない!!
まさかこんな形で自分に特大ブーメランが返ってくるとは!!
永遠のブーメラン
そういえば、当たり前のように
「最近の若い子らは」
という言葉を使っている!!!!
僕がかつてめんどくさい先輩の相手を受け流してたように
いまや僕が受け流されている側なのか!!
もしかしたら後輩のスキルが上がっていて、受け流していないような受け流し方をされているのかもしれない!!
くそぉ……。
先輩をあしらってたつもりが、僕があしらわれていたとは……。
こうなったら僕にできることは、一つしかない。
今まで諸先輩方から教わってきた
「打ち上げハラスメントの極意」
を後輩に炸裂させ
その10年後、15年後に今の若手が
「いや、ほんま三四郎師匠の打ち上げ、かなわんかったで」
とさらに下の後輩にぼやかせる。
「打ち上げハラスメントの連鎖」
これを上方落語の伝統として受け継いでいくしかない!!
僕の元に返ってきたブーメランを後輩に託して
後輩の放ったブーメランが、後頭部に直撃するのを
目を細めて眺めよう。
上方落語の打ち上げよ、永遠なれ。。。
▼落語家・桂三四郎 公式サイト
(毎月24日頃、掲載予定)
―― 桂三四郎『けっきょく選んだほうが正解になんねん』シリーズ連載一覧
こちらもどうぞ。桂笑金「食べ物が詰まった、師匠桂三金の思い出と棺桶」
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