三合目 ~京都漫遊記 〈壱〉
「伯知の日本酒漫遊記 ~酒は“釈”薬の長」
- 講談
松林 伯知
2025/10/01
伏見の地下水が生む絶品日本酒! 伏水酒蔵小路の夜
伏見に酒蔵が集まったのは、伏見の美味しい地下水と、豊臣秀吉が伏見城を築き、城下町が栄えたからと言われている。江戸時代には80を超える酒蔵があったものの、幕末、鳥羽・伏見の戦いで多くが焼失。困難の中、復活していった蔵たちが、明治39年日本国有鉄道の誕生により、伏見の清酒を全国に広めていくことになる……。
史跡見学でもう夜間になっていたため、伏見の各蔵の見学は翌日にするとして、その蔵たちの味を一気に楽しめる良いところがある、と地元民(私がいつもプレイしているオンラインゲーム、ファイナルファンタジーXIVでチームを組んでいる酒好きの光の戦士。実際に会ってもキャラまんまである)に連れてきて貰ったのが、「伏水酒蔵小路」さんであった。
伏見の酒150銘柄以上があるというこちらの名物が、この十八蔵のきき酒セットである!

すごいインパクト。十八のグラスにたっぷり並々と。しかも、ただ十八種揃えてあるだけではない。
「こちら、上段、左から右に順に飲んでいってください。甘めの食前酒、肴や料理に合う辛口、〆に合う濃厚な酒の順に並んでいますので」
店員さんが丁寧に解説してくれる。食事の時間経過まで計算されて選出されたこだわりの十八種なのである。

確かに、一段目の酒たちは、爽快、甘やか、フレッシュ。暑い日に乾杯したら、グイッと飲みほしたくなる、シャンパンやサングリア、白ワイン、サイダーのような、のどごし良い日本酒で、歩き回った身体に染み渡るうまさ。
「都鶴 極辛 純米吟醸」を鯛のお造りで
そして、二段目からは、これは合わせる料理のセンスが試されると思って磐石の面々を注文しておいた。
・鯛のお造り
・本もろこの佃煮
・珍味三種(ほたるいか沖漬け、梅なんこつ、イカの肝あえ)
・あん肝の天ぷら



これらと最高のペアになる酒を残り十二種から探そうというので、夢中になって試してしまった。
結果、沖漬けや肝あえ、本もろこ佃煮は三段目の普通酒たちが合い、梅なんこつは全般万能に合ったのだが、一番のオススメは……鯛の刺身に、あん肝天ぷらについていた塩胡椒をかけたやつ×都鶴 極辛 純米吟醸(都鶴酒造)のペアでした!
鯛のお造りが、関東じゃあまり見ない?厚切り。ついてくるのは甘めのお醤油。これをつけても美味しいのだが、たまたま、あん肝天ぷらにかける塩が残っていてかけてみたら、もっちり淡白な甘みが塩で際立って、伏見のスッキリ辛口の酒を後から流し込むと、口の中に更に旨みを感じでオススメです。お試しあれ。
京都のうまいものと言われてもピンと来ない……なんて話からはじめてしまったが、もしかすると名酒と組み合わせることにより、最強になる料理の数々もあるのかもしれない。京都民の皆さま……関東の人間にも隠さず、是非ともその秘密があれば、どんどん教えてくださいまし。
さて、十八種のきき酒をして、気になる蔵を見定めた私は、翌日、伏見の酒蔵巡りを始めたのであった……。
(以上、敬称略)
― 京都漫遊記 〈弐〉に続く ―
▼都鶴酒造株式会社
(毎月1日頃、掲載予定)
―― 松林伯知『伯知の日本酒漫遊記 ~酒は“釈”薬の長』 シリーズ連載一覧
いま読まれています!
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第20回
優しさと知性で物語を紡ぐ 田辺一邑(後編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2025/12/01
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第19回
優しさと知性で物語を紡ぐ 田辺一邑(中編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2025/11/30
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第18回
優しさと知性で物語を紡ぐ 田辺一邑(前編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2025/11/29
「“本”日は晴天なり ~めくるめく日々」 第6回
〈書評〉 8番出口 (川村元気 著)
~ゲームと小説が重なる不思議な体験
笑福亭 茶光
2025/12/01
「テーマをもらえば考えます」 第4回
キウイフルーツ
~うん、凄いね、熟成! 熟成が凄いんだね!!
三遊亭 天どん
2025/11/30
鈴々舎馬風一門 入門物語 第12回
青春の終わりに入門。青春の始まりの入門 (後編)
~楽屋で学んだ人生のLUCK GO!
柳家 獅堂
2025/06/05
「オチ研究会 ~なぜこのサゲはウケないのか?」 第4回
権助魚、壺算、明烏
~「帰りたい」って、泣いてたよね?
林家 はな平
2025/08/06
シリーズ「思い出の味」 第15回
水茄子とジンジャーエール
~夏の青臭さ、生姜風味の泡沫が映す情景
林家 彦三
2025/11/25
鈴々舎馬風一門 入門物語 第9回
小じかの一歩目 (前編)
~筋金入りの落研部員
柳家 小じか
2025/05/23
「コソメキネマ」 第七回
朝のドラマ
~髙石あかりさん主演の『ベイビーわるきゅーれ』シリーズをご紹介!
港家 小そめ
2025/11/23
「テーマをもらえば考えます」 第4回
キウイフルーツ
~うん、凄いね、熟成! 熟成が凄いんだね!!
三遊亭 天どん
2025/11/30
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第19回
優しさと知性で物語を紡ぐ 田辺一邑(中編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2025/11/30
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第18回
優しさと知性で物語を紡ぐ 田辺一邑(前編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2025/11/29
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第20回
優しさと知性で物語を紡ぐ 田辺一邑(後編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2025/12/01
「“本”日は晴天なり ~めくるめく日々」 第6回
〈書評〉 8番出口 (川村元気 著)
~ゲームと小説が重なる不思議な体験
笑福亭 茶光
2025/12/01
鈴々舎馬風一門 入門物語 第12回
青春の終わりに入門。青春の始まりの入門 (後編)
~楽屋で学んだ人生のLUCK GO!
柳家 獅堂
2025/06/05
シリーズ「思い出の味」 第15回
水茄子とジンジャーエール
~夏の青臭さ、生姜風味の泡沫が映す情景
林家 彦三
2025/11/25
「オチ研究会 ~なぜこのサゲはウケないのか?」 第4回
権助魚、壺算、明烏
~「帰りたい」って、泣いてたよね?
林家 はな平
2025/08/06
「テーマをもらえば考えます」 第3回
ハロウィン
~ご祝儀くれなきゃ、イタズラするぞー
三遊亭 天どん
2025/10/31
「ずいひつかつどお」 第6回
きょうなにようび
~ブラックフライデーで、ハッピーハッピー!
立川 談吉
2025/11/29
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第5回
落語家の夢
~俺の目は、まだ濁っていない!!!
桂 三四郎
2025/11/27
シリーズ「思い出の味」 第15回
水茄子とジンジャーエール
~夏の青臭さ、生姜風味の泡沫が映す情景
林家 彦三
2025/11/25
「すずめのさえずり」 第五回
ドーピングと芸名 ~志ん雀の由来~
~切実さと爆笑で綴られる、芸名誕生秘話
古今亭 志ん雀
2025/11/26
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第18回
優しさと知性で物語を紡ぐ 田辺一邑(前編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2025/11/29
「テーマをもらえば考えます」 第4回
キウイフルーツ
~うん、凄いね、熟成! 熟成が凄いんだね!!
三遊亭 天どん
2025/11/30
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第19回
優しさと知性で物語を紡ぐ 田辺一邑(中編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2025/11/30
「ずいひつかつどお」 第6回
きょうなにようび
~ブラックフライデーで、ハッピーハッピー!
立川 談吉
2025/11/29
「芸人本書く派列伝 クラシック」 第7回
〈書評〉 芸談 あばらかべっそん (桂文楽 著)
~名人の素顔は、磨かれた語りの行間に宿る
杉江 松恋
2025/11/28
「ピン芸人・服部拓也のエンタメを抱きしめて」 第7回
百花繚乱! 10人組の落語家ユニット「芸協カデンツァ」がやって来た【前編】
~世代を超えた多種多様、香味全開のおもしろユニット!
服部 拓也
2025/11/20
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第20回
優しさと知性で物語を紡ぐ 田辺一邑(後編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2025/12/01
月刊「シン・道楽亭コラム」 第7回
シン・道楽亭、誕生前夜から今へと続くキャリー・ザット・ウェイト
~すべては菊太楼師匠との駄話、駄飲みから始まった
シン・道楽亭
2025/11/13
「令和らくご改造計画」
第四話 「初心者よ永遠なれ」
~AIが落語を演じる時、それでも人は笑えるのか?
三遊亭 ごはんつぶ
2025/11/12
「宇宙まで届け! 圧倒的お転婆日記」 第7回
ビールの秋、日本酒の秋、わたしの美が深まる秋
~浪曲師の日記が、ここまで笑えていいんですか!
東家 千春
2025/11/03
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第5回
落語家の夢
~俺の目は、まだ濁っていない!!!
桂 三四郎
2025/11/27
「かけはしのしゅんのはなし」 第6回
大会後のご褒美は、魅惑のナポレターナとプロシュート!
~11月20日は、ピザに恋する日!
春風亭 かけ橋
2025/11/18
シリーズ「思い出の味」 第15回
水茄子とジンジャーエール
~夏の青臭さ、生姜風味の泡沫が映す情景
林家 彦三
2025/11/25
「ラルテの、てんてこ舞い」 第5回
雀々が残した大提灯
~今もたくさんの人に愛される桂雀々師匠
ラルテ
2025/11/10
「講談最前線」 第10回
2025年11月の最前線 (聴講記:神田松麻呂・神田鯉花 連続読み、神田春陽の会)
~リレー講談「寛永宮本武蔵伝」と、緩急自在の「大岡政談」
瀧口 雅仁
2025/11/17
「講談最前線」 第8回
2025年9月の最前線 【後編】 (宝井小琴の二ツ目昇進、神田鯉花の結婚/講談入門② ~入門書編1)
~講談界の慶事と、初心者におススメの一冊
瀧口 雅仁
2025/09/14
入船亭扇太の「お恐れながら申し上げます」 第3回
番頭色々
~「本当にやって良かった」 に感謝を込めて
入船亭 扇太
2025/11/11
編集部のオススメ
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第4回
上方落語大会議「なんぼでなんぼ」
~苛酷な仕事、ギャラなんぼやったら行く?
桂 三四郎
2025/10/24
「マクラになるかも知れない話」 第三回
となりは鼻うがいをする人ぞ
~ねぇママ、パパは何をしているの?
三遊亭 萬都
2025/10/22
「エッセイ的な何か」 第5回
10/9は、アメリカンドッグの日 →兄さんに呼び出された男の困惑
~その男は『ドッグ』と呼ばれた!
三笑亭 夢丸
2025/10/21
「かけはしのしゅんのはなし」 第5回
スポーツの秋! 落語家がサーフパンツで舞台に立つ日
~筋肉は裏切らないが、笑いはたまに裏切る?
春風亭 かけ橋
2025/10/18
「くだらな観音菩薩」 第6回
鑑真和上
~そう、諦めちゃあいけないんだ
林家 きく麿
2025/10/16
「令和らくご改造計画」
第三話 「内輪ノリ」
~またも前座が楽屋を混乱に陥れる!
三遊亭 ごはんつぶ
2025/10/12
「宇宙まで届け! 圧倒的お転婆日記」 第6回
ビール飲み干し、そしてわたしに秋が来る
~時にヒリヒリ、時に爆笑の舞台裏!
東家 千春
2025/10/03