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三合目 ~京都漫遊記 〈壱〉
「酒は“釈”薬の長 ~伯知の日本酒漫遊記~」 第3回
- 講談
伏見の地下水が生む絶品日本酒! 伏水酒蔵小路の夜
伏見に酒蔵が集まったのは、伏見の美味しい地下水と、豊臣秀吉が伏見城を築き、城下町が栄えたからと言われている。江戸時代には80を超える酒蔵があったものの、幕末、鳥羽・伏見の戦いで多くが焼失。困難の中、復活していった蔵たちが、明治39年日本国有鉄道の誕生により、伏見の清酒を全国に広めていくことになる……。
史跡見学でもう夜間になっていたため、伏見の各蔵の見学は翌日にするとして、その蔵たちの味を一気に楽しめる良いところがある、と地元民(私がいつもプレイしているオンラインゲーム、ファイナルファンタジーXIVでチームを組んでいる酒好きの光の戦士。実際に会ってもキャラまんまである)に連れてきて貰ったのが、「伏水酒蔵小路」さんであった。
伏見の酒150銘柄以上があるというこちらの名物が、この十八蔵のきき酒セットである!

すごいインパクト。十八のグラスにたっぷり並々と。しかも、ただ十八種揃えてあるだけではない。
「こちら、上段、左から右に順に飲んでいってください。甘めの食前酒、肴や料理に合う辛口、〆に合う濃厚な酒の順に並んでいますので」
店員さんが丁寧に解説してくれる。食事の時間経過まで計算されて選出されたこだわりの十八種なのである。

確かに、一段目の酒たちは、爽快、甘やか、フレッシュ。暑い日に乾杯したら、グイッと飲みほしたくなる、シャンパンやサングリア、白ワイン、サイダーのような、のどごし良い日本酒で、歩き回った身体に染み渡るうまさ。
「都鶴 極辛 純米吟醸」を鯛のお造りで
そして、二段目からは、これは合わせる料理のセンスが試されると思って磐石の面々を注文しておいた。
・鯛のお造り
・本もろこの佃煮
・珍味三種(ほたるいか沖漬け、梅なんこつ、イカの肝あえ)
・あん肝の天ぷら



これらと最高のペアになる酒を残り十二種から探そうというので、夢中になって試してしまった。
結果、沖漬けや肝あえ、本もろこ佃煮は三段目の普通酒たちが合い、梅なんこつは全般万能に合ったのだが、一番のオススメは……鯛の刺身に、あん肝天ぷらについていた塩胡椒をかけたやつ×都鶴 極辛 純米吟醸(都鶴酒造)のペアでした!
鯛のお造りが、関東じゃあまり見ない?厚切り。ついてくるのは甘めのお醤油。これをつけても美味しいのだが、たまたま、あん肝天ぷらにかける塩が残っていてかけてみたら、もっちり淡白な甘みが塩で際立って、伏見のスッキリ辛口の酒を後から流し込むと、口の中に更に旨みを感じでオススメです。お試しあれ。
京都のうまいものと言われてもピンと来ない……なんて話からはじめてしまったが、もしかすると名酒と組み合わせることにより、最強になる料理の数々もあるのかもしれない。京都民の皆さま……関東の人間にも隠さず、是非ともその秘密があれば、どんどん教えてくださいまし。
さて、十八種のきき酒をして、気になる蔵を見定めた私は、翌日、伏見の酒蔵巡りを始めたのであった……。
(以上、敬称略)
― 京都漫遊記 〈弐〉に続く ―
▼都鶴酒造株式会社
(毎月21日頃、掲載予定)
―― 『酒は“釈”薬の長 ~伯知の日本酒漫遊記』シリーズ連載一覧