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転失気、まんじゅう怖い、みそ豆

「オチ研究会 ~なぜこのサゲはウケないのか?」 第6回

十八席目 『みそ豆』 ★★★

【あらすじ】

 丁稚(でっち)の定吉(さだきち)が旦那に頼まれ、台所に“みそ豆”を見に行く。定吉は見てこいと言われたのに、美味しそうなので食べてしまう。

 それを旦那が見つけて、定吉は怒られて使いに出される。

 旦那はぶつぶつ文句を言いながらも、美味しそうなので同じように食べてしまう。このまま食べていたら定吉に見つかるので、お椀に入れて、はばかり(便所)で食べようと、一人こもってみそ豆を食べている。

 そこに定吉が帰ってくる。旦那がいないのでみそ豆を食べる。だけど、ここで食べていたら旦那に見つかるので、隠れて食べようと考えるが……

【オチ】

 どこで食べようか考える定吉。はばかりなら見つからないだろうと考えて、お椀に入れてはばかりへ向かう。戸を開けると、旦那が座り込んで、みそ豆を食べている。

旦那「こら定吉、何しに来た?」
定吉「えっと……おかわり持って参りました」

【解説】

 我が林家一門(特に三平一門)が最初に覚える噺である。短いのにオチが秀逸である。豆を食べる所作も入っていて、初心者にもわかりやすい。学校公演、寄席の早い出番、初心者が集まる会など、いろいろな場面で活躍する噺である。

 オチも洒落で終わるようなものではなく、きちっと定吉が決めてくれる。そして必ずウケる。

 この噺のすごいところは、オチが一番ウケるところで、なかなかこういう噺は少ない。オチで感心する噺はあるが、オチで笑いがどっと起きる噺は珍しい。

 筆者がこの噺を教わったのは、入門して1ヵ月ほどしてから。枕に、一分線香即席噺(いちぶせんこうそくせきばなし)や小咄(こばなし)が二つほど付いていたので、全体では15分の一席であった。落研出身だったので、とても丁寧にクセを治されて、上げてもらう(高座でやる許可をもらう)のに十回ほどかかった覚えがある。プロの洗礼を受けた噺でもあるので、思い入れは強い。

 以前は、林家のお家芸のようなネタで、林家一門が出ていると他の一門の人は避けるようなネタだったが、今では誰でもやるネタになっている。

 こないだ、とある寄席で私の出番の前に上がった後輩が『みそ豆』をかけていて少し寂しかったが、それくらいウケる噺なのは間違いない。

2025年10月のピックアップ公演はこちら。

林家はな平 公式Webサイト

(毎月6日頃、掲載予定)