転失気、 まんじゅう怖い、 みそ豆
「オチ研究会 なぜこのサゲは受けるのか?」 第6回
- 落語
林家 はな平
2025/10/06
十八席目 みそ豆 (みそまめ) ★★★
[ワンポイント]
この噺に出てくるのは、商家の旦那と丁稚(でっち)の定吉(さだきち)。舞台は台所と、もう一つだけ少し厄介な場所である。用を言いつけられただけなのに、食べ物を前にすると人は弱い。大人も子どもも、立場が違っても、同じ過ちをする。そのズルさが笑いになる噺だ。
◆【あらすじ】
丁稚の定吉が旦那に頼まれ、台所に“みそ豆”を見に行く。定吉は見てこいと言われたのに、美味しそうなので食べてしまう。
それを旦那が見つけて、定吉は怒られて使いに出される。
旦那はぶつぶつ文句を言いながらも、美味しそうなので同じように食べてしまう。このまま食べていたら定吉に見つかるので、お椀に入れて、はばかり(便所)で食べようと、一人こもってみそ豆を食べている。
そこに定吉が帰ってくる。旦那がいないのでみそ豆を食べる。だけど、ここで食べていたら旦那に見つかるので、隠れて食べようと考えるが……
◆【オチ】
どこで食べようか考える定吉。はばかりなら見つからないだろうと考えて、お椀に入れてはばかりへ向かう。戸を開けると、旦那が座り込んで、みそ豆を食べている。
旦那 「こら定吉、何しに来た?」
定吉 「えっと……おかわり持って参りました」

◆【解説】
我が林家一門(特に三平一門)が最初に覚える噺である。短いのにオチが秀逸である。豆を食べる所作も入っていて、初心者にもわかりやすい。学校公演、寄席の早い出番、初心者が集まる会など、いろいろな場面で活躍する噺である。
オチも洒落で終わるようなものではなく、きちっと定吉が決めてくれる。そして必ずウケる。
この噺のすごいところは、オチが一番ウケるところで、なかなかこういう噺は少ない。オチで感心する噺はあるが、オチで笑いがどっと起きる噺は珍しい。
筆者がこの噺を教わったのは、入門して1ヵ月ほどしてから。枕に、一分線香即席噺(いちぶせんこうそくせきばなし)や小咄(こばなし)が二つほど付いていたので、全体では15分の一席であった。落研出身だったので、とても丁寧にクセを治されて、上げてもらう(高座でやる許可をもらう)のに十回ほどかかった覚えがある。プロの洗礼を受けた噺でもあるので、思い入れは強い。
以前は、林家のお家芸のようなネタで、林家一門が出ていると他の一門の人は避けるようなネタだったが、今では誰でもやるネタになっている。
こないだ、とある寄席で私の出番の前に上がった後輩が『みそ豆』をかけていて少し寂しかったが、それくらいウケる噺なのは間違いない。
▼林家はな平 公式Webサイト
▼林家はな平 X
(毎月6日頃、配信予定)
●演目一覧(2026年4月時点)
あ行 明烏 あたま山 牛ほめ
か行 片棒 看板のピン 紀州 きゃいのう 甲府い 子別れ 権助魚
さ行 七段目 芝浜 寿限無 崇徳院 粗忽長屋 ぞろぞろ
た行 大工調べ たいこ腹 たがや 狸札 短命 茶の湯 壺算 つる 転失気 道灌 時そば
な行 にらみ返し 抜け雀 寝床 野ざらし
は行 不動坊 堀之内
ま行 まんじゅう怖い みそ豆
や行 淀五郎
ら行
わ行
―― 林家はな平『オチ研究会 なぜこのサゲはウケるのか?』連載一覧
いま読まれています!
シリーズ「思い出の味」 第23回
カレーのような草枕
~自由でゆるくて、どこか芯がある。かつて新宿にあった名店の終焉を描く、愛おしい物語
田辺 一記
2026/04/21
シリーズ「思い出の味」 第22回
亡き父の味と、鰻に導かれる名人の味
~人生と落語と鰻の不思議なご縁
三遊亭 あら馬
2026/04/20
「令和らくご改造計画」
第九話 「地獄のモーニングコール」
~落語家は寝すぎ? 働かなすぎ? 前座が仕掛ける“狂気の作戦”とは!?
三遊亭 ごはんつぶ
2026/04/12
シリーズ「思い出の味」 第6回
茶色いうどん
~自分の未来を見つめる8歳の少年
三遊亭 ごはんつぶ
2025/06/25
「芸人本書く派列伝 オルタナティブ」 第12回
〈書評〉 愛し、愛され。 (毒蝮三太夫・玉袋筋太郎 著)
~盟友の証言から浮かび上がる談志師匠の毒の裏に潜むユーモアと知性
杉江 松恋
2026/04/18
シリーズ「思い出の味」 第21回
レンズ豆のスープ
~若き日、スペインでの空腹、フラメンコギター、そして人の優しさ
天中軒 景友
2026/04/17
「芸人本書く派列伝 オルタナティブ」 第11回
〈書評〉 サライ 2026年4月号 (大特集:落語 講談 浪曲 サライの「演芸」 令和の名人)
~人間国宝の鼎談から若手の最前線まで網羅した豪華特集。読むほどに、もっと聴きたくなる!
杉江 松恋
2026/03/19
「コソメキネマ」 第二回
チンドン屋人生
~チンドンの音がスクリーンで流れる『マダムと女房』をご紹介!
港家 小そめ
2025/06/12
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第9回
優雅な航海中の後悔を公開
~“憧れの仕事”から繋がる伏線が鮮やかな船旅エッセイ!!!
桂 三四郎
2026/04/13
「令和らくご改造計画」
第八話 「酔っ払いにSNSを」
~芸人のSNSは、なぜ自由すぎるのか?
三遊亭 ごはんつぶ
2026/03/12
「くだらな観音菩薩」 第12回
日光菩薩と月光菩薩
~怒りと笑いを行き来しながら、菩薩様のような優しさに辿り着くエッセイ
林家 きく麿
2026/04/16
シリーズ「思い出の味」 第22回
亡き父の味と、鰻に導かれる名人の味
~人生と落語と鰻の不思議なご縁
三遊亭 あら馬
2026/04/20
「お恐れながら申し上げます」 第8回
三櫂屋というお店
~仕込み、接客、失敗、反省、すべてが詰まった、扇太さんのリアルな青春バイト譚
入船亭 扇太
2026/04/15
シリーズ「思い出の味」 第21回
レンズ豆のスープ
~若き日、スペインでの空腹、フラメンコギター、そして人の優しさ
天中軒 景友
2026/04/17
シリーズ「思い出の味」 第23回
カレーのような草枕
~自由でゆるくて、どこか芯がある。かつて新宿にあった名店の終焉を描く、愛おしい物語
田辺 一記
2026/04/21
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第9回
優雅な航海中の後悔を公開
~“憧れの仕事”から繋がる伏線が鮮やかな船旅エッセイ!!!
桂 三四郎
2026/04/13
「噺家渡世の余生な噺」 第12回
教える者が、教えられた日
~生徒を裏切った、最後の授業。教える者の責任と弱さを綴る、苦くも温かなエッセイ
柳家 小志ん
2026/04/14
「芸人本書く派列伝 オルタナティブ」 第12回
〈書評〉 愛し、愛され。 (毒蝮三太夫・玉袋筋太郎 著)
~盟友の証言から浮かび上がる談志師匠の毒の裏に潜むユーモアと知性
杉江 松恋
2026/04/18
シリーズ「思い出の味」 第8回
理想のパスタ
~カッペリーニ、芝生を添えて
三遊亭 萬都
2025/07/15
「令和らくご改造計画」
第九話 「地獄のモーニングコール」
~落語家は寝すぎ? 働かなすぎ? 前座が仕掛ける“狂気の作戦”とは!?
三遊亭 ごはんつぶ
2026/04/12
「浪曲案内 連続読み」 第10回
新釈浪曲忠臣蔵 ~202X年赤穂の旅
~忠臣蔵は難しい? そんな先入観を覆す浪曲コラム
東家 一太郎
2026/03/24
「令和らくご改造計画」
第九話 「地獄のモーニングコール」
~落語家は寝すぎ? 働かなすぎ? 前座が仕掛ける“狂気の作戦”とは!?
三遊亭 ごはんつぶ
2026/04/12
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第9回
優雅な航海中の後悔を公開
~“憧れの仕事”から繋がる伏線が鮮やかな船旅エッセイ!!!
桂 三四郎
2026/04/13
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第31回
映像思考で編む、新世代講談 田辺一記(前編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2026/03/28
「くだらな観音菩薩」 第12回
日光菩薩と月光菩薩
~怒りと笑いを行き来しながら、菩薩様のような優しさに辿り着くエッセイ
林家 きく麿
2026/04/16
「宇宙まで届け! 圧倒的お転婆日記」 第12回
お転婆が過ぎると命を落とすこともある
~転んでも前に進む浪曲師の軽やかで楽しい芸人日記!
東家 千春
2026/04/03
「座布団の片隅から」 第12回
地獄
~春風亭㐂いち兄さん、柳家小はだ兄さん、三遊亭歌彦さんと僕でスキーに行ってきたのだが…
三遊亭 好二郎
2026/04/07
「エッセイ的な何か」 第10回
3月8日は、餃子の日 →無茶苦茶、食う男の偉業
~柳亭痴楽師匠と名古屋『百老亭』の思い出
三笑亭 夢丸
2026/03/23
月刊「シン・道楽亭コラム」 第12回
一粒の麦 ~世界に広がれ、落語の輪 in 名古屋!
~名古屋の演芸文化を支える多彩な人たちの静かな情熱とリアルな声を追ったコラム
シン・道楽亭
2026/04/10
「講談最前線」 第16回
2026年4月の最前線 【前編】 (講談協会が一般社団法人として始動へ)
~講談はいつも面白く、そして新しい
瀧口 雅仁
2026/04/11
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第9回
優雅な航海中の後悔を公開
~“憧れの仕事”から繋がる伏線が鮮やかな船旅エッセイ!!!
桂 三四郎
2026/04/13
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第5回
落語家の夢
~俺の目は、まだ濁っていない!!!
桂 三四郎
2025/11/27
「艶やかな不安の光沢」 第1回
謂れなきものたちの飛躍
~年始からとちってしまった芸人の胸のうち
林家 彦三
2026/02/12
「令和らくご改造計画」
第六話 「若手人気落語家殺人事件 【事件編】」
~古典派と新作派の溝!?
三遊亭 ごはんつぶ
2026/01/12
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第6回
運と皆様のおかげです
~人間は弱い生き物です
桂 三四郎
2026/01/01
「令和らくご改造計画」
第四話 「初心者よ永遠なれ」
~AIが落語を演じる時、それでも人は笑えるのか?
三遊亭 ごはんつぶ
2025/11/12
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第8回
微笑みながら中指を
~笑えて震える、ご近所交流録! マトリックスばあさん、降臨!!
桂 三四郎
2026/02/25
シリーズ「思い出の味」 第19回
雪のココア
~内弟子時代に憧れた甘い味
柳家 わさび
2026/01/13
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第7回
世間せまないか?
~落語家を多数輩出する片田舎、神戸の垂水
桂 三四郎
2026/02/01
シリーズ「思い出の味」 第15回
水茄子とジンジャーエール
~夏の青臭さ、生姜風味の泡沫が映す情景
林家 彦三
2025/11/25
編集部のオススメ
「浪曲案内 連続読み」 第10回
新釈浪曲忠臣蔵 ~202X年赤穂の旅
~忠臣蔵は難しい? そんな先入観を覆す浪曲コラム
東家 一太郎
2026/03/24
「芸人本書く派列伝 オルタナティブ」 第11回
〈書評〉 サライ 2026年4月号 (大特集:落語 講談 浪曲 サライの「演芸」 令和の名人)
~人間国宝の鼎談から若手の最前線まで網羅した豪華特集。読むほどに、もっと聴きたくなる!
杉江 松恋
2026/03/19
「噺家渡世の余生な噺」 第11回
手紙 ~拝啓、四十八の君へ~
~来てくださった人の顔を忘れるな。 自分のために頭を下げてくださった人の姿を忘れるな
柳家 小志ん
2026/03/14
「令和らくご改造計画」
第八話 「酔っ払いにSNSを」
~芸人のSNSは、なぜ自由すぎるのか?
三遊亭 ごはんつぶ
2026/03/12
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第27回
古今東西を自在に読む講釈師 松林伯知(前編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2026/03/12
月刊「シン・道楽亭コラム」 第11回
シン・道楽亭Webサイトリニューアル! ほぼほぼAIで作ってみた話
~どんな思いで運営しているのか、どんな場所として受け入れられたいのかをお伝えしたい
シン・道楽亭
2026/03/10
月刊「浪曲つれづれ」 第11回
2026年3月のつれづれ(玉川太福の受賞、玉川奈々福の徹底天保水滸伝、『深夜食堂』&『陰陽師』の浪曲化)
~スターの活躍と新しい挑戦が交差する、いまの浪曲界をご紹介
杉江 松恋
2026/03/09
「二藍の文箱」 第10回
かたばみ日記 ~初主任の十日間
~高座と人生が交差する、濃密で温かい日々の舞台裏
三遊亭 司
2026/03/02
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第8回
微笑みながら中指を
~笑えて震える、ご近所交流録! マトリックスばあさん、降臨!!
桂 三四郎
2026/02/25
掲載記事300本記念
〈掲載記事300本記念〉 柳家さん喬師匠 スペシャルインタビュー【前編】
~小さん師匠の「おめでとう」から始まる新しい年
話楽生Web 編集部
2026/01/25