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「朝橘目線」 第6回

体育の授業で学んだ人生の障害物

 中学生の時、体育の授業でハードル走をやった。

 世代的に、小学生の頃から任天堂のゲームにお世話になった自分は、ゲームを通じてハードルという存在を知った。あれは「ハイパーオリンピック」というソフトだったか、それとも一時期流行った「ファミリートレーナー」という、マット状のコントローラーの上で実際に足踏みすると画面上のキャラクターが走るアレだったか。どちらも友達の家で遊ばせてもらったのは間違いない。

 とにかくゲーム上で触れたハードル走。超高速で走るキャラクターが、ハードルを全てなぎ倒してゴールしていた。その雄姿に、何とも言えない爽快感に、友人たちと大興奮した。楽しかった。

 そんな思い出を振り返りつつ、先生の指示に従い、白線の内側にハードルを並べる作業を行った。存外に重くて驚いた。こんなもん、なぎ倒すの無理だろ……と絶望した。

 設置作業を終え、今度は順番に走る。跳ぶ。高い! 高すぎる! 足に当たる。痛い。倒すと先生に怒られる。爽快感どころじゃない。

 そもそも走りたいんなら、こんな障害物があるところを無理に走らず、避けて行けば良いのに。競技の根本を疑問に思った。

 そういや中学生の時、マラソン大会もあった。自分に勝るとも劣らない鈍足の級友から「一緒にゴールしようぜ」と誘われた。一人じゃないって、素敵なことね。懸命に走った。ゴール間際、そいつが加速して先にゴールした。遅れてゴールした私を、奴は見向きもしなかった。

 そんなこんなで、自分はスポーツを観ても楽しめない人間になった。凄さは分かる。でもそれ以上に、過去の記憶が酸っぱい何かと共にこみ上げてくるから。

 そんなちっぽけな自分はさておき、世界陸上は盛況だったらしい。行きつけの床屋の担当さんも、私の髪を切りながらその楽しさを解説してくれた。SNSでも実際に観に行った人の投稿を多数見かけた。ブルーインパルスは、私も拝みたかった。

 閉会後、世界陸連の会長さんが「夏のパーティーとクリスマスが一緒にやってきたような大会になった」と言ったらしい。「盆と正月が一緒に来たよう」の国際版なのか。勉強になる。

 さらに会長さんは「また日本で五輪やれたら」とまで言ったとか。ついこないだやったばかりだから、自分が生きている間にもう一回ってのはないだろうけど。