NEW

第七話 「若手人気落語家殺人事件 【解決編】」

「令和らくご改造計画」

#5

 「兄さんを助けたかっただけなのに!」

 事情聴取の場で、まにあは泣きながら、何度もそう叫んだという。声を張り上げるというより、自分自身に言い聞かせるような調子だった。

 「あのままじゃ、兄さんは……」

 彼女の話によれば、しん作は数日後、自宅で薬を過剰摂取して死ぬつもりだったという。

 確かに、業界内のプレッシャーに参っている様子は、多くの人が目撃していた。楽屋でぼんやりしている時間が増え、冗談への反応も鈍かった。だが、彼女の言うような具体的な死の計画があったという証拠は、どこからも見つからなかった。

 それでも、まにあはただ一つの言葉を繰り返した。

 「未来が、見えたから……」

 真実は分からない。彼女が本当に、未来の一端を見たのかもしれないし、追い詰められた末に生まれた、強い思い込みだったのかもしれない。

 ただ、もし仮に彼女は未来を変えようと、しん作の楽屋へ押しかけたにも関わらず、結果的に彼の死という運命は、別の形で強引に収束するのだとしたら。

 未来を変えることはできないのだろうか。(もっとも、そんな話を信じるならば、だが)

 とにかく、今回の事件は結果的には事故だった。

 古典派が殺したわけではない。新作派が殺したわけでもない。

 そうではあるが、古典亭しん作を殺したのは、「どちらかであれ」と言い続けてきた、この業界の圧力だったのかもしれない。その圧力が、静かに、しかし確実に、一人の噺家を追い詰めていったのだ。

 ……やはり最近、楽屋の様子がおかしい。

― 続く―

三遊亭ごはんつぶ official

三遊亭ごはんつぶ X

(毎月12日頃、掲載予定)