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知らぬ同士が映画館で

「コソメキネマ」 第十二回

笑う人

 映画館で観るということの面白さの中に、まったく知らない人と同じ空間で観るというのがあります。もちろん他人と同じ空間にいるというのは、一人で家で観るような自由さや気楽さはありません。

 名画座に通っていると時々あるのですが、上映されている映画が、今の時代とズレが生じていることで、その映画の意図しているところとは違う、サブカル的な笑いが起こることがあります。笑いに自己主張があるというか。個人的にあまりそういう笑いが好きではないので、時々、うーんと思うこともあります。

 ある時、映画館で隣に座った人が過剰に笑う人だったことがありました。そこ笑うところ?と思うところまで、とにかくよく笑う。映画が始まってから、あまりに笑うので、とても気になり、ちょっとイライラして、席を移動しようかどうしようか迷いながら観ていました。

 でも物語が進み、面白いシーンになった時、隣の笑い声と自分の笑い声が少し重なったことがありました。それから何度か隣の人と笑いが重なるうちに、だんだん面白くなってきて、ついにぴったりと笑い声が重なった時、あんなにイライラしていたのも忘れ、なんだかとっても楽しくなってしまいました。

 一時、この見知らぬ笑う人と映画を共有したような気がしたのです。