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知らぬ同士が映画館で

「コソメキネマ」 第十二回

坂東好太郎

 加藤泰監督の『朝霧街道』という映画を観ていました。

 『朝霧街道』は、1961年(昭和36年)に公開された高田浩吉主演の股旅映画です。縞の合羽(しまのかっぱ)に三度笠(さんどがさ)の主人公が海辺の砂浜を歩いてくる冒頭シーンから橋の上の一人の女、モノクロの映像が美しい。

 映画も終盤、しっとりとした別れのシーンで、突然、携帯の着信音が鳴り響きました。その場の空気が声はありませんが、「ここで!? このシーンで鳴らす?!」という雰囲気で張りつめました。

 しばらくすると着信音が止まり、場内の雰囲気がホッとしたのもつかの間、また同じ着信音が! 先ほどより、やや怒りのボルテージが上がった場内全体から

 「まだ切ってなかったんかーい!」

 という無言の突っ込みが。その無言の圧力を感じたのか感じなかったのか、なんとその携帯電話の持ち主、

 「はいはい~今映画見てて~」

 その瞬間、場内全体が一つになり

 「電話、出るんかーい!!」

 という声なき声が全員から発せられたのがわかりました。携帯電話の持ち主は、電話で話しながら外に出ていったようでした。 

 上映が終わり、場内が明るくなると、私の近くに座っていた男性がすっくと立ち上がり、声を上げました。

 「携帯電話鳴らした奴、出てこーい!」

 近くにいた人も、よく言った!というような雰囲気になり、それに力を得たのか、さらに続けて

 「天才、加藤泰監督に謝れ~!」

 そしてその後、

 「坂東好太郎、出てこーい!」

 まわりの人が、えっ? 名前知ってるの? 知り合い? みたいな雰囲気になった時、その男性がちょっと照れながら

 「今の映画に出ていた、悪い親分の役者だよ」

 と言いました。映画を人と観るのは面白い。

 携帯電話は、上映前に切りましょう。

(文中、敬称略)

港家小そめ X

https://x.com/hikoukiya

今回の映画

朝霧街道

監督:加藤泰
脚本:鈴木兵吾
出演:高田浩吉、 木暮実千代、中村竜三郎、北沢典子、山城新伍 ほか
公開:1961年(昭和36年) / 上映時間:83分 / 日本

朝霧街道 作品情報・キャスト・あらすじ(映画.com)

またまた宣伝で恐縮ですが……5月17日、ご来場お待ちしております!

第二回 浪々談々(ろうろうだんだん)

  • 日程:
  •  5月17日(日)
  •  開場 18:30 開演 19:00
  • 会場:
  •  鈴座カフェ Lisa cafe
  •  (江東区毛利1-2-10 伊神ビル1階)
  •  →Googleマップ
  • 出演:
  •  田辺一記(講談師)
  •  港家小そめ(浪曲師)
     沢村博喜(曲師)

  • ※毎回三席で、二席を交代でつとめます。
    ※今回は講談二席、浪曲一席、トークコーナーとなります。今回のトークテーマは「沢村博喜誕生の巻」
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  • 料金:
  •  予約 2,000円 当日 2,300円
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  • ご予約:
  •  メール → ten5560@gmail.com

(毎月23日頃、配信予定)

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