三櫂屋というお店
「お恐れながら申し上げます」 第8回
- 落語
入船亭 扇太
2026/04/15
四谷三丁目・杉大門通の名店
学生時代から続くご縁
おはようございます。入船亭扇太です。
三櫂屋と書いて、何と読むでしょうか。これで「さかいや」と読みます。読むのが難しい店名です。私が学生の頃からお世話になっているお店です。今でも偶数月の土曜日にお店をお借りして、勉強会をやらせていただいております。今回は、三櫂屋について書きたいと思います。
三櫂屋は、四谷三丁目の杉大門通にある豚しゃぶのお店です。豚しゃぶのコンロはガスではなく、炭を使います。そのコンロの上に鉄鍋を置くと、あら不思議。沸騰することなく、高温を保つことができます。沸騰しないと、灰汁(あく)が出ません。これが美味しく豚肉を食べる秘訣です。
豚肉は、ブランド名が付かないほど希少な豚をお店のスライサーで店長自ら、その日に使う肉を切ります。フレッシュなお肉は、色が変わったらすぐに食べることができます。薄ピンクくらいが美味しいです。豚肉のほかには、長ネギと巻き湯葉だけです。細切りのネギをさっと湯にくぐらせて豚肉と食べると、何枚でも食べられます。
タレはポン酢ではなく、生醤油と酢を合わせたものです。余計なものが入っていないので飽きることなく、気がついたらお肉をおかわりしてしまいます。不思議なことに、どれだけ食べても翌日に胃もたれをしたことがありません。無駄をそぎ落とした、洗練された豚しゃぶです。

私が三櫂屋でアルバイトを始めたのは、大学3年生の頃だったと思います。大学からは、自転車で通っておりました。落語研究会の部室がある学生会館を出ると、左に曲がって戸山公園の坂を登ります。箱根山の名前が付くくらいの傾斜のある山で、登りきる頃には息も絶え絶え、汗ぐっしょりで、良いウォーミングアップになります。
若松河田駅の横を通り抜けると、曙橋商店街があります。親子連れや学生が多く、楽しそうな声を聞きながらお店に向かうと、頑張ろうと気力が湧いてきます。曙橋駅の横の坂を登ります。地味に長く急な坂ですが、箱根山を越えた私には、なんてことない坂です。悠々と坂を登りきると、杉大門通が見えてきます。
この通りにある北村ビルの2階にあるのが、三櫂屋です(道順は、記憶を頼りに書いているので不正確です。思い入れのある道のりだけを書いています)。
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