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映像思考で編む、新世代講談 田辺一記(後編)
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第33回
- 講談
瀧口 雅仁
2026/03/30
田辺一記 近影(墨亭にて)
一時期、絶滅危惧種とまで言われるも、現在、東西合わせて120名を超えるまでになった講釈師。江戸から明治、大正、昭和と、主に男性が読み継いできた芸であったが、平成、令和と時代を経て、女性目線による女性の講談が世に送り出されてきた。その時、講釈師は何を考え、何を読んできたのか。第一線で活躍する女性講釈師に尋ねてみた。〈田辺一記(たなべかずき)さんの前編/中編/後編のうちの後編〉
軍談の魅力
―― 一記さんがこれからやっていきたいことや取り組んでいきたい演目があればお聞きしたいのですが、何かそうしたことで師匠からアドバイスをいただいたりはしていますか。
一記 田辺派の講釈師として、本をいただいて、そのままやるんではなくて、自分で工夫するようにと言われています。それを直接言われた記憶はないんですが、前座の間は工夫する余裕はなくて、ほぼそのままやっていました。ただし工夫ではありませんが、違和感を覚える部分は直していました。
―― 最初に読んだ演目は、やはり『三方ヶ原軍記』ですか。
一記 はい、緊張しましたが、途中で止まらずにやった記憶があります。3~4回目に読んで慣れてきた頃が危なくて、絶句してしまいました。
―― 好きな話は何ですか。
一記 師匠からいただいた『臆病弥八郎(おくびょうやはちろう)』です。修羅場もあって、滑稽なところがあるのが好きなんです。あとは『真田の入城』も同じように、軍談、修羅場調子でありながら笑えるところがあるのが読んでいて気持ちいいんです。
―― 軍談が好きなんですね。普段の高座からすると、失礼ながら意外にも思えます。
一記 軍談修羅場は好きです。いまだに調子はどうなんだろうと、自信がないままに読んでいます。師匠が新作を読まれる時に、オリジナルの修羅場を入れるじゃないですか。あれはやってみたいですね。
―― この間も『山葉寅楠(やまはとらくす)オルガンを直す』で、寅楠が浜松から東京へオルガンを担いで運ぶ場面を修羅場調子で読まれていました。
一記 師匠は歌うのが好きですから、うまく読まれます。私は音感が……。歌もカラオケに連れて行ってもらうと、一応は歌うんですが、のっぺりとした感じになってしまうんです。音痴とまではいきませんが、メリハリもなくて、どこか中途半端なんです。
―― どんな歌を唄うんですか。
一記 主に高田渡と中島みゆきを唄います。
―― おお、私は一時期、高田渡の追っかけをしていましたし、そのあたりは『演説歌とフォークソング』(彩流社)という本で書きました! 高田渡の何を唄いますか。
一記 『値上げ』や『銭がなけりゃ』『自転車に乗って』です。『値上げ』は聞いている人が「な~んだ」とウケますし、オチがあって楽しい。中島みゆきは母親が好きで、地元群馬でのコンサートにも行きました。声が低めなので、私にも歌いやすいんです。
高田渡(1949年~2005年)の『値上げ』は、作詞は有馬敲で、作曲は高田本人。2000年(平成12年)に発表した曲で、最初は「値上げはぜんぜん考えぬ」としておきながら。言い訳や遠回しな表現を用いながら、値上げに理屈をつけて、ラストは「値上げにふみきろう」と、結局は値上げをするという、フォークソングのテーマにあるべき社会の矛盾を皮肉った歌である。高田渡はほかに『年輪』『180°回転』といった有馬敲の詞に曲をつけて歌っている。
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