映像思考で編む、新世代講談 田辺一記(後編)
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第33回
- 講談
瀧口 雅仁
2026/03/30
ドキュメンタリー愛が生んだ芸名の由来
―― では、これから読んでみたい話を教えてください。
一記 山以外だと、『阿賀に生きる』というドキュメンタリー映画が作られていく過程を講談にできればいいなと思います。
―― そう言えば、田辺一記の名の由来は「記録」の「記」から来ていると聞いたことがあります。
一記 最初は本名の「ゆきこ」の「貴」にしようかという話だったんですが、画数が悪いのと、ドキュメンタリー映画が好きなので、記録映画の「記」にしました。
―― なるほど。あとはどんな話に挑みたいですか。
一記 あとは田辺派らしい話をあまり持っていないので、田辺派に伝わる古典を読んでみたい。
―― 最近『藪井玄意(やぶいげんい)』を手掛けていますね。浪曲の方では聴くことがありましたが、あまり講談で読まれる方がいないので珍しくもあり、一記さんに合っているなと思っています。
一記 『藪井玄意』は、たまたま手元に何冊かあった本の中にあった演目で、連続講談勉強会で、一つ目の『磔茂左衛門(はりつけもざえもん)』が読み終わって、次を決める時に師匠と相談して始めました。他にも群馬が登場する『安中草三(あんなか そうざ)』もあったんですが、盗賊が出てくる話はちょっと……と言われたので、こちらにしました。
上方でも読まれているみたいですし、一乃姉さんも読んでいらっしゃいますが、副題とかが大分異なるので、違う本なのかもしれません。持っている速記本に落丁があったりして、話がつながらないところもあったりするんですが、そういったところは想像をして読んだりもしています。
―― 今も話に出ましたが、出身の群馬を舞台にした話と言えば、『磔茂左衛門』といった珍しい話も読んでいました。
一記 群馬県人の必須アイテム「上毛かるた」にも登場します。「上毛かるた」は全札を話にできるかはわかりませんが、塩原太助(多助)も登場するので、沢山できれば面白いですね。
―― 私は東京の府中市にある小学校に通っていたんですが、府中市には「武蔵府中郷土かるた」というのがあって、「上毛かるた」と文句が似た札があります。〈和算の学者 関孝和(せきたかかず)〉がそれです。
一記 似ていますね。「上毛かるた」では敬意を込めて、「せきこうわ」と読むことになっています。
―― 一記さんが好きな札は何ですか。
一記 〈ねぎとこんにゃく 下仁田名産〉(笑)。下仁田に縁がある訳ではないんですが、ふと浮かぶのがその一句なんです。「上毛かるた」は昔と絵柄がぜんぜん変わってなくて、何だかボンヤリとした絵で、味わい深いなと思っています。そう言えば、絵札を画風で分けるといった遊びをしたことがあるんですが、あとで全部同じ人が描いていたということがわかって驚いたことがありました。
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