一分茶番、 棒鱈、 権兵衛狸
「オチ研究会 なぜこのサゲは受けるのか?」 第十六回
- 落語
権兵衛狸(画:おかめ家ゆうこ)
オチがもっと面白くなる落語入門!
落語といえば、やっぱり最後の「オチ」。ひと口にオチと申しましても、そこには笑っていただくための、いろんな仕掛けや工夫が隠れております。この連載では、そんなオチを〈演じる側の視点〉から、「あらすじ」とともにやさしく解説。さらに、その仕掛けを★〜★★★の三段階で分類いたします(★の基準は、第一回をご参照ください)。
第十六回は、一分茶番、棒鱈、権兵衛狸の三席。それぞれ、いったいどんな仕掛けで最後の笑いにつながるのか。初心者の方でも楽しめる、オチがもっと面白くなる落語入門の幕開きでございます。
四十六席目 一分茶番 (いちぶちゃばん) ★
[ワンポイント]
落語には、当時の流行や娯楽を知ると、ぐっと面白くなる噺がある。江戸時代には町人が役者気分を楽しむ素人芝居が人気で、地域の一大イベントでもあった。この噺は、その和やかな催しが大騒動へ変わる様子を描く爆笑噺である。
◆【あらすじ】
ある長屋で、素人芝居をやることになった。
演目は『有職鎌倉山』(ゆうしょくかまくらやま)だが、「盗人の権平」役の伊勢屋の若旦那が来ない。仕方なく番頭は、飯炊きの権助を一分(いちぶ)で雇って代わりをやらせる。
権助は大の芝居好きなので、その気になって役の説明を受ける。
ところがいざ芝居となると、上手くいかない。台詞を間違えたり、見物に話しかけたり、終いには捕まえられるはずの役人役を殴る始末。権助が役人役に縄で縛られる場面となると、見物から「権ちゃん、到頭(とうとう)縛られたね。情けないね」と声が飛ぶ。
権助は「縛られてないよ。芝居だから縛られたふりだけ。疑る(うたぐる)なら見せようか。ほら」と後ろ手に隠していた手を見せる。そのうちに「ほら、ほら」と言いながら踊り出したので、役人役は本当に権助を縛り上げるが…
◆【オチ】
役人役が縄に鐺(こじり:日本刀の鞘の先端部分)を突っ込んで、
役人役 「さあ、一体何者に頼まれた。まっつぐに白状しろ!」
権助 「いたたたたた、一分もらって番頭さんに頼まれた」
◆【解説】
前半で切ると『権助芝居』、オチまでやると『一分茶番』となる。一分は、一両の四分の一で、現在の金額にすれば1万円~2万5千円くらいなので、芝居好きの権助なら喜んで引き受けるのも頷ける。
私が歌舞伎に初めて触れたのは、大学生時代。母校の学習院大学には「国劇部」というのがあって、そこから観劇の誘いがあったのだ。まだ建て替える前の旧歌舞伎座。三階席から舞台を覗き込むように観た芝居に魅了された。内容はあまり理解できなかったが、歌舞伎独特の世界観に妙な高揚感があった。それからたまに観劇をするようになる。
前座修行時代は行けなかったが、二ツ目になってからは観劇再開。そしていつしか「鹿芝居」(しかしばい)をやりたいと思い始めて、2018年(平成30年)に実現した。鹿芝居とは「噺家がやる芝居」をもじったもので、先人が繋いできたものだ。噺家が鹿芝居をやりたくなるくらいだから、娯楽の少なかった当時は、素人芝居が方々であったのだろう。
この噺は、前半は権助が地元で忠臣蔵の『七段目』をやったエピソードで、後半は『有職鎌倉山』の役の説明から本番へとなだれ込む。ちなみに『有職鎌倉山』は、私は観たことのない演目で、調べるとかなり前(50年以上前)にやったっきり掛かっていない演目のようだ。権助がやる役は、元々は非人の権平なのだが、盗人の権平に変えている。
最後に宣伝。はな平主催の令和鹿芝居は年に一度、12月頃に開催しているので、ぜひ観てほしい。
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