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微笑みながら中指を

「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第8回

中指グランドフィナーレ

上の階の踊り場に、仁王立ちのマトリックスばあさん。

ドアノブを握り締め、階段の下からばあさんを睨みつける僕。

互いに見交わす顔と顔。

もちろんここで引けるわけがない。

ここで謝るくらいならこんなことする意味がない。

というかそもそも謝る筋合いすらない!!!

僕はマトリックスばあさんを睨みつけながら

今までの恨みを込めた渾身の力でドアを

バァーーーーーーーーーーーーンッ!!!!!!!!!!

怒り狂ったマトリックスばあさんは

「くおらぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」

ドアの音が小さく聞こえるほどの怒号が鳴り響く。

殺される!!

肌で悟った僕は、そのまま階段を駆け下りマンションの外に逃げ

後ろを振り返った。

ん? 追いかけてこないぞ

そうか、マトリックスばあさんといえど、普段杖を使ってるお年寄りだ。

追いかけても追いつかないことはわかっていたのだろう。

なんか悪いことしたかもしれないな……。

他の住民にも迷惑かけたしな……。

そう思っていると、ばあさんの部屋の窓が勢いよくガラガラッ!!と開き

窓から顔を出したマトリックスばあさんは、無言でこっちを睨みつけながら

僕に向かって中指を立てていた……。

あの時の顔は、今でも鮮明に覚えている。。。

このマトリックスばあさん以外の隣人には恵まれてきたが

今はSNS社会で素性がバレてしまうと、僕が今どこで何をやっているかすぐにバレてしまうし

全く興味を持たれないのも、それはそれで寂しくもある。

もういい大人なのでご近所さんに迷惑をかけていないつもりではあるが

基本的に芸人なんて奴らは非常識の集まりでしかないので、無意識のうちにご迷惑をおかけしていたかもしれない……。

とにかくご近所さんとも付かず離れずでそこそこ上手くやっていきたい。。。

もしお隣さんをはじめ、ご近所さんがこのエッセイを読んでいたら

「読みましたよ」や「いつも読んでます」と言われるのは恥ずかしいので

僕に向かって微笑みながら、そっと中指を立ててください。

(文中、敬称略)

落語家・桂三四郎 公式サイト

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(毎月24日頃、配信予定)