〈書評〉 待ってました名調子! (国本武春 著)
「芸人本書く派列伝 クラシック」 第12回
- 浪曲
- Books
杉江 松恋
2026/04/29
浪曲と音楽の融合、そして飛躍
武春はもともと音楽志向が強く、中学時代にはブルーグラス(アメリカの伝統的アコースティック音楽)、高校に入ってからは津軽三味線の習得に勤しんでいた。日本工学院専門学校に入ると演芸の魅力にはまり、在学中の1980(昭和55)年に浪曲の三味線弾きを志願して、曲師のベテランである東家みさ子に入門する。そのみさ子の夫が、浪曲師のベテランとして中堅・若手の育成に熱心だった東家幸楽である。
夫婦の芸に接するうちに曲師ではなく、浪曲師になりたいという夢が膨らんできて、武春は1981(昭和56)年に幸楽に改めて入門する。最初に与えられた台本は、縁起のいい出世物の「若き日の藤田伝三郎」であったという。
というところが全6章という構成の、第1章の内容である。武春の母は2024(令和6)年に亡くなった浪曲師の国本晴美、父も元浪曲師で四代目天中軒雲月の弟子として龍月の名を貰っていた。芸人の血筋であったが、音楽の道を経由して自らの意志で浪曲を選んだわけだ。
第2章では、浅草木馬亭を舞台とした修業話が語られる。若手の入門者が増えて、前座が複数人いるような現在では考えられないような逸話が紹介されている。第3章を飛ばして第4章が、前述の武春雄飛時期を伝える内容である。
1986(昭和61)年からボイストレーニングの教室に通い始めるなど、浪曲師修業と並行して音楽熱も再発、三味線によるロックンロール演奏がレコード会社の目に留まり、数々の曲を吹き込むことになる。その延長線上でミュージカルに呼ばれ、ついに宮本亞門演出の「太平洋序曲」でニューヨークとワシントンの公演にも参加が叶った。このときの客席の反応が忘れがたく、武春はアメリカで自身の芸を練り直すことを考えるようになった。
2003(平成15)年9月から2004(平成16)年8月まで、文化庁在外研修制度を利用し、東テネシー州立大学への留学が実現、現地で組んだブルーグラスバンド「The Last Frontier(ザ・ラストフロンティア)」は、帰国翌年の2005(平成19)年に日本公演ツアーも実現している。
福太郎の「徹底天保水滸伝!」は2004年春に第1回が開催され、2005年初頭に終わっているので、武春不在の時期に始まり、その期待論が再燃するのに合わせて浪曲界を盛り上げていたことがわかるだろう。
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