この鼻に かくれんぼする 白髪かな
「朝橘目線」 第13回
- 落語
三遊亭 朝橘
2026/05/08
2009年(平成21年)2月に撮影。明らかに今と違う
卯の花に 兼房見ゆる 白毛かな
(うのはなに かねふさみゆる しらがかな)
―― 河合曾良(おくのほそ道)
老化が止まらない――。
子どもの頃、「廊下は走らないで!」と先生に言われたものだが、老化は駆け出すと止まらない。先生に注意されても、聞きゃあしない。老眼が特にきつい。以前、眼科医の先生から「その年で老眼始まるのは早い方ですね」と言われ、ショックを受けたが、楽屋に行くと老眼に悩む同世代の多いこと。
四十肩も、もとは五十肩だったのが段々低年齢化して、四十肩と呼ばれるようになったとか。しかもその原因が未だに解明されていないんだそうな。はるか遠い宇宙のことまで知ることができても、ある朝、突然上がらなくなる肩に対して、人類はお手上げらしい。上がってんの? 下がってんの?
短髪の私はあまり目立たないが、めっきり白髪が増えた。「めっきり」なんて言葉は、こういう時あえて使わないと、年単位で出てこない。この前のめっきりはいつだったろう。思い出せない。これもまた老化のせいか。いや、これはめっきりの問題だと思う。会話の中では使いにくい。手紙などで「めっきりお寒くなりました」などと使うのが多いのではないか。手紙や葉書を出すのが減ったにせよ、メールやLINEなどはむしろよく使う。
業務連絡のやり取りで、めっきりの出番はあるだろうか。「めっきりお客が減りましたが、次の落語会、どうしますか?」。これは嫌だ。激減な感じが凄い。絶対やめたがっている。何なら先方ではもう、やめることが決まっていて、一応聞いてきている感じすらある。めっきりでぼっきり心が折られる。めっきりぼっきりこれっきり。してみると、強い言葉なのかもしれない。仕事上ではもっとやんわりした表現が望ましい。
やはり寒い暑いなど、自然現象に対して使うのが良さそうだ。自然は強くて当たり前だから。そういう時候の挨拶、四季に思いを馳せるという日本人の豊かな情緒。それらを「タイパ」などという、実に味気ない価値観で日常から排除した結果、めっきりがめっきり使われなくなったのだと思う。めっきりが目に見えて増えてくることがあったら、それは日本人が豊かさを取り戻した証。もっとめっきりを使おう。
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