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三櫂屋の賄い

「お恐れながら申し上げます」 第9回

「三十六人衆」と酔っぱらった思い出

 たまに「何か作って」と言われます。そういう時には、生姜焼きをよく作っていました。ほかに鍋に野菜と肉を入れて適当に味付けをして煮たり、にんにくを多めにして野菜炒めを作ったりしていました。ごくまれに「これは美味い」と言ってくれる時があります。「また作ってよ」と頼まれても、その日の気分で調味料を入れているので再現することができません。

 お客さんが多いと、疲れているので味が濃くなります。レポートの締め切りが近いと、頭を使いたくないので塩と胡椒だけの簡単な味付けになりました。キャベツを炒める時は、少し塩を加えると青臭さがなくなるようですよ。この先の高座で使うことがない知識です。

 この賄いがすごいのは、日本酒が飲み放題なところ。生ビールは最初に1杯、営業を終えてサーバーを閉める前に飲むことができます。その後は、日本酒を好きなだけ飲ませてもらいました。店長曰く「お酒の味を知らないとお客様におすすめできないでしょ」とのこと。お店で出しているお酒を飲んでました。

 もちろん、お高いお酒は遠慮してましたが、たまに「少ないから飲んじゃって」ということがあります。この時は、普段飲まない純米吟醸なるものを飲むことができました。いつものお酒と甲乙つけがたい味がしました。それなら、いつものお酒でいいような気もします。「高いお酒」というレッテルを味わっているだけかもしれません。

厳選した日本酒(三櫂屋 公式HPより)

 新しいお酒を試してみようという日には、店長とバイトで味見をします。「少し辛口だね」とか「味が強いね」とか同意を求められますが、愛想笑いで頷くことしかできませんでした。「三十六人衆」という純米酒をよく飲んでました。ですが、もう売ってません。酒蔵もなくなってしまいました。手に入ることはないでしょう。寂しいです。思い出の味です。嘘です。酔っぱらって、よく覚えてません。