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2026年5月の最前線 【後編】 (聴講記:大阪・木曜おはよう講談会 / おすすめの講談会)

「講談最前線」 第19回

11:14 旭堂南華「黒雲お辰」

 大和国の領主・黒木大和守は貧乏旗本で、黒木村の領民たちは出世を願い、ご用金を用立て、正直者の信兵衛を江戸の屋敷へと使いに出す。ところがその金を盗られてしまい、身投げをしようとしていたところを、一人の女性に助けられる……。

 大切な金を盗られてしまった信兵衛の気持ちと、気風のいいお辰という女性に会った時に覚える安堵感。そしてお辰が信兵衛を前に人心を説く姿が、感情を押し出すばかりでなく、言葉で丁寧に読み上げていくので、こちらにまでその思いが伝わってくる。インタビューでは、自身の聴いてほしい一作として『奴の小万』を挙げていたが、この『黒雲お辰』も南華十八番として挙げたい一席。

旭堂南華(なみはや講談協会 公式HPより)

旭堂南華 X

11:44 旭堂一海「源平盛衰記 ~石橋山の戦い」

 源氏側の佐奈田与一義忠は、平家側の岡部弥次郎を討ち、頼朝を敗走させた平家側の俣野五郎景久と一騎打ちに挑む。さあ、いよいよ!というところで、「ここでお時間」と一旦ケレンを挟み込み、聴き手の期待を裏切りながら、戦いの続きへ。互いの馬と馬が競り合い、その上で組み討ちをする場面では緊迫感を与え、馬同士が愚痴を言い合うセリフを挟み込んだりと、話の緩急の絶妙なシフトチェンジを行っていく。やがて夜になり、大雨が降り出すと、暗闇になったら敵も味方もわからない。そこに雷鳴が轟き、その時!というところで、今度は本当の幕切れ。

 使いまわす表現のようであるが、何しろテンポが良くて、物語の運びも小気味良い。一海の高座の特徴は、表情が豊かで一語一語の言葉に力があり、また、ひと息が長いので、こうした軍記物の時には、よりその読みが冴えてくる。まだ7年目という芸歴でありながら、そうした聴かせる講談に必要なものを揃えているのは頼もしい。あれも聴きたい、これも聴きたいと、聴き手の欲が出てくる高座が魅力である。

旭堂一海(なみはや講談協会 公式HPより)

旭堂一海 X

12:14 終演

 心地よい講談を三席聴き終えた勢いで、玉造駅からほど近い所に建つ三光神社に立ち寄る。前の日に聴いた『真田三代記』にも登場する「真田の抜け穴」に戦国武将さながら駆け付けた次第。いい講談を聴いた後には、講談舞台散歩をしたくなる。