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師匠のコーヒーは

「テーマをもらえば考えます」 第14回

 師匠とコーヒーといえば、もう1つ。

 入門願いに初めて行った時、師匠に喫茶店に連れて行ってもらいました。師匠はアイスコーヒーを頼み、緊張している私は一番間違いないモノだと思い、ホットコーヒーを。

 そして師匠は、入門についての話ではなく、「今の落語界は間違ってる!」と語り始めました。「さすが落語界や新作のことを考えていらっしゃるんだなー」と思い、聞いていました。

 やがて、ほどなくしてコーヒーが来ると、師匠はおもむろにホットコーヒーを飲み始めます。

 「え!? 違うほうを飲んだ!!!」
 「どうしよう? コレは言ったほうがいいのかな?」
 「ひょっとしてコレは、入門の試験として試されているのだろうか!?」
 「落語界全体の話は、難し過ぎてよく分からないぞ?」
 「コーヒーは言ったほうがいいのかな?」
 「そもそも入門はどうなるんだろう?」
 「コーヒーは言ったほうがいいのかな?」

 ……オナカイタイ!

 もはやコーヒーを中心に無限ループです。おそるおそる「あの、コーヒーが」とたずねてみると、

 「あー、違った。じゃあそっちを」

 深い意味なかった! 良かった、考え過ぎだった!!

 30分ほど、師匠から落語界のことや、新作は厳しい仕事だということを聞いた後、「じゃあそういうことで」と師匠は立ち上がりました。

 「え!? まだ入門の話してない!!!」

 困惑している私をよそに、師匠は「じゃあ、また明日、電話して」と電話番号を渡してアッサリ帰っていきました。

 後で分かることですが、師匠はそういう人なのです。そう、スケールが大きいのです! そう、大きいのです! 大きいの!!!