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2026年5月の最前線 【前編】 (聴講記:大阪・連続講談千鳥亭 / 講談『太閤記』小考②)

「講談最前線」 第18回

2026年5月の最前線 【前編】 (聴講記:大阪・連続講談千鳥亭 / 講談『太閤記』小考②)

此花住吉商店街に建つ「此花千鳥亭」

瀧口 雅仁

執筆者

瀧口 雅仁

執筆者プロフィール

 講談はいつも面白い。そして講談はいつも新しい――。講談の魅力って? 講談ってどこで聴けるの? どんな講釈師がどんな講談を読んでいるの?と、それにお応えするべく、注目したい講釈師や会の情報、そして聴講記……と、講談界の「今」を追い掛けていきます。〈2026年5月の【前編】〉。

連続物で味わう講談の醍醐味

 5月の「講談最前線」は、4月30日に配信した旭堂南華のインタビューの際に訪れた大阪での聴講記をメインに、そこで感じた連続物(連続読み)のあり方を『真田三代記』や『源平盛衰記』などから【前編・後編】の二回にわたって考察するとともに、やはり連続で読まれている『太閤記』の小考や『徳川天一坊』の会などを取り上げる。

 改めて思うのは、講談の魅力はライブにある!ということだ。

聴講記:連続講談千鳥亭(2026年3月25日 此花千鳥亭)

 まず最初に、数年ぶりに此花千鳥亭(このはなちどりてい)を訪ねてみた。なんば駅から阪神電車に乗り、最寄りとなる千鳥橋駅へ。此花住吉商店街を進めば、右手に見えてくるのが上方講釈師の旭堂小南陵(きょくどうこなんりょう)がDIYで2019年(令和元年)にこしらえた演芸場である。

旭堂小南陵 公式ホームページ

 高座が高めに設えてあるので、定員30名の小ぢんまりとした客席はどこからでも見やすい。積極的にネット配信も行っているので、画面を通して高座の様子はわかるが、やはり一度は訪ねて会場の雰囲気を感じてもらいたい。

此花千鳥亭 公式ホームページ

 今回の目的は「連続講談千鳥亭」で、原則、毎月10日間、旭堂小南陵と旭堂南龍(きょくどうなんりゅう)の講談に落語が一本入って、午前11時から12時までの1時間で1,000円と気軽に楽しむのにもってこいの会である。この日(2026年3月25日)の落語のゲストは月亭希遊(つきていきゆう)で毎日、三題噺に挑んでいるとのこと。

11:03 旭堂小南陵「真田三代記 ~その236『穴山小助の最期』」

 2022年(令和4年)の「365日千鳥亭」で読み始めた『太閤記』に続き、『真田三代記』を連続で読んできた小南陵のこの日の高座は、『穴山小助の最期』。

 大坂城が火に包まれる中、豊臣秀頼を救うために真田幸村は穴山小助を影武者にするが、西尾仁左衛門(宗次)に小助が討たれてしまうといった段で、小南陵は千鳥亭の開設に至る経緯と運営を維持していくことの大変さ(とっても良くわかる(笑))と、これまで訳のわからないことも沢山あったという苦労談のマクラから、今回読む物語も訳のわからないことや、苦労が続いていくことを簡潔にまとめて本題へ。

 幸村と秀頼が大坂城から敵の襲撃に遭いながらも、何とか海上に逃げることができたという山場は「明日へのお楽しみ」と、講談的に言う“惜しい切れ場”としてまとめてみせた。

 小南陵の読み口は声の通りが良く、大胆さもあり、笑いも適宜挟んでいくため、『真田三代記』のような歴史物の軍記物であっても要所に人間臭さを出すことができ、さらに大阪の女性(としたら、語弊があろうか)風解釈が入ってきたりと、縦横無尽に話の世界を飛び回り、聴き手をそうした世界へ引き込んでいく点が魅力である。

 この日の動きの激しい場面であっても、話の勘所をおさえて緩急や強弱を自在に読んでいくからこそ、次回が気になって仕方がないと思わせる。それこそ連続物を聴く醍醐味を堪能できた。上方講談界の中堅に小南陵がいることが頼もしい。