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〈書評〉 暁星 (湊かなえ 著)

「“本”日は晴天なり ~めくるめく日々」 第11回

心が穴だらけになって学んだこと

 自信がない人間は、ネガティブな発言が多くなる。私もネガティブに思われることがよくある。しかし、私は自分のことを“ネガティブを飼い慣らしたポジティブ”だと思っている。

 もともと自分を過大評価しているから、人前に出てお笑いをしようなどという発想があるわけで、そこはもう完全に『スーパーポジティブ』な考え方だ。その後、漫才師を経て落語家となった。振り返れば、掴んだと思ったチャンスが、握った拳の隙間から幻のように消えていく感覚を何度も味わった。

 当時、心は隙間どころか、スポンジ・ボブのように穴だらけになっていた。お笑いを志した頃のスーパーポジティブは、跡形もなく消し飛んでしまった。しかし、その経験が私をネガティブを飼い慣らす存在『ネオポジティブ』へと進化させてくれたのだ。

 ではここで、ネオポジティブとは何かを説明しよう。

 例えば、「大きい仕事が入る」と、ポジティブな人間は『よっしゃー! 俺に任せろ!』と、自分が上手くいく勝利のイメージを思い浮かべる。ネガティブな人間は『俺には無理だ……』と、プレッシャーに押しつぶされそうになる。

 ネオポジティブの私は、こうだ。

 『おそらく、俺では無理だろう。ということは、こういう流れになるかもしれないからここを考えておこう。万が一上手くいく可能性もあるから、その場合も考えておこう。でも、仮にこの仕事で上手くいかなかったとしても、俺は別に殺されるわけじゃない』

 マイナスのパターンを想像し尽くし、ネガティブの海の底に一旦潜り、底を確認してから光に向かって浮上を始める。これがネオポジティブだ。良くも悪くも自分を信じるしかない。損得抜きで、自分に力を貸してくれるのは自分しかいないのだ。

 私は心の隙間をネオポジティブで補填したので、何かに依存することなく生きているが、自分は大丈夫でも自分の家族が歪んだ善意に取り込まれてしまうと想像したら恐ろしい。