〈書評〉 暁星 (湊かなえ 著)
「“本”日は晴天なり ~めくるめく日々」 第11回
- 落語
- Books
笑福亭 茶光
2026/05/01
やっぱり凄い!
私の妻は『マリア』という漫才コンビを組んで活動している。ツッコミの『サラマンダーゆみみ』が私の妻だ。芸名の由来は、私もよく知らない。
売れてない芸人というのは、常に悶々としたストレスを抱えている。宗教に助けを求め、ある日突然、『ナンマンダーゆみみ』に改名したらどうしよう。いや、ナンマンダーは別に良い。南無阿弥陀仏は、ここで言う怪しい宗教とは全く違う。『ナンマンダーゆみみ』なら何の問題もない。阿弥陀様には、目先のボケに走ってしまった私のこともお許しくださる慈悲深さがおありだ。
聞いたことのない宗教にハマられるのが怖い。『漆黒の闇黒龍教』とかにハマったらどうしよう。右腕を包帯でグルグル巻きにしてその上にお札を貼り、世界を滅ぼしてしまう黒龍を右腕に封印している教祖の写真をSuicaのケースに入れ始めたらどうしよう。教祖の右腕が疼くたびにお布施を求められるに違いない。
教団内でのランクもある。赤龍→銀龍→金龍と上がっていくに違いない。そうなると、お布施合戦が始まる。
「お布施しないと、いつまで経っても私、一番下のカス龍なのよ! 桃龍に上がるには1000ブラックドラゴン足りないのよ!!」
独自の単位で、ポイントを付けてるに違いない。広報誌の表紙には、いつも歌手の白龍が載っているんだ。家族が得体の知れない何かにハマるのは怖い。そもそもサラマンダー(中世錬金術における四大精霊のうち、火を司る精霊)もとても宗教的な存在だ。
『暁星』は、宗教二世をテーマにした社会派ミステリーとして物語が進んでいくが、中盤から物語の見せ方がガラリと変わる。実はこの物語には暁のほかにもう一人の主人公がいる。そこから社会派ミステリーが極上のエンタメ小説の読み心地へと変化していく。
久しぶりの読書を始めたが、湊かなえはやっぱり凄い。隙間のない私の心にグサリと刺さった。『湊かなえ教』があったら、信者として入会してしまうかもしれない。お布施して、ランクを赤かなえ→銀かなえ→金かなえ……。
(文中、敬称略)
▼笑福亭茶光 X

- 書名 : 暁星
- 著者 : 湊かなえ
- 出版社 : 双葉社
- 書店発売日 : 2025年11月
- ISBN : 9784575248562
- 判型・ページ数 : 四六判・376ページ
- 定価 : 1,980円(本体1,800円+税10%)
(毎月1日頃、配信予定)
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