NEW
〈書評〉 はい、出前落語です 北の噺家=落語活動家の誕生 (東家夢助 著)
「芸人本書く派列伝 クラシック」 第17回
- 落語
- Books
杉江 松恋
2026/10/01
揺れ動く噺家人生
初高座は1959(昭和34)年4月21日、正式な入門を許されて間もない時期に川崎演芸場で務めた。駅前のビル4階にあり、階下のパチンコ屋の騒音が聞こえてくるような寄席だったという。1963(昭和38)年に二ツ目昇進、柳家小三太(やなぎやこさんた)となる。
それまでの4年間には、酒の味を覚えるなどの寄り道もあったようだ。さらに、1960(昭和35)年には高校時代の友人と安保闘争にも参加している。寄席勤めをサボって横田基地を包囲した10万人のデモ隊のひとりになった。このあたりに後の人生が見えている気がする。
落語家・柳家小三太の契機は、労音寄席を知ったことだった。電車内のポスターを見て、東京労音事務局に乗り込み、出演を勝ち取った。いざ会場の向ヶ丘遊園(現在は閉園)に行ってみると、高座が設置されているのは屋外の屋台、しかも客席との間が道路という最悪な環境だった。しかし詰めかけた労音会員はきちんと座って聞いてくれた。このことに感激し、小三太は労音に好感を抱くようになる。
労音とは「全国勤労者音楽協議会」の略称で、勤労者が会費を自弁して音楽や芸能に親しんでいく職場の文化活動としてさまざまな催しを開いている。趣旨に賛同した小三太は、自ら代表者となって文化サークルまで結成した。
その縁から一員となったのが1961(昭和36)年に設立された〈民俗芸能を守る会〉である。落語の世界からの主要な参加者の一人が、八代目林家正蔵(のちの林家彦六)だった。芸の上では伯父にあたるこの落語家にも可愛がられた。
やがて決定的な瞬間が訪れる。二代目神田山陽の一門にいた大谷竹山(おおたにちくざん)の一座に加わって函館を訪れたのである。竹山は、もともと社会運動家だった人が講談師になったという人物だ。函館労音の人々と出会い、その誠実な人柄に触れた結果、小三太は自身の生き方に迷いを覚えるようになる。
帰京後も、本業よりも邦楽や民族芸能などに気持ちが揺り動かされる日々が続き、落語家としては伸び悩む。さらに前座時代に覚えた酒に溺れるようになり、ついには1966(昭和41)年6月10日に睡眠薬を飲んでの自殺未遂事件を引き起こす。
もう落語界にはいられないと覚悟を決めたところに来たのが、函館労音からの招きだった。こうして小三太こと田中誠は、25歳にして函館移住を決意、函館労音の事務局員として働き始めるのである。
いま読まれています!
「芸人本書く派列伝 クラシック」 第17回
〈書評〉 はい、出前落語です 北の噺家=落語活動家の誕生 (東家夢助 著)
~落語家を辞めた男が函館で見つけた、「自分だけの落語」
杉江 松恋
2026/10/01
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第13回
「継続は力なり」ではない
~僕を待っていた、悲しい結末。“計画倒れ人生”を笑い飛ばす愉快な実話エッセイ!?
桂 三四郎
2026/09/29
「テーマをもらえば考えます」 第14回
師匠のコーヒーは
~笑いも苦みもたっぷり、師弟をつなぐコーヒーの思い出を綴ったエッセイ
三遊亭 天どん
2026/09/30
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第41回
一途に講談を生きる 田辺いちか(前編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2026/07/14
「テーマをもらえば考えます」 第13回
フロートの向こう側
~テーマのクリームソーダにちなんで、いろんなお酒でフロート、やります!?
三遊亭 天どん
2026/08/31
「芸人本書く派列伝 クラシック」 第8回
〈書評〉 はなしか稼業 (三遊亭円之助 著)
~人生とは、恥ずかしいことなんだ
杉江 松恋
2025/12/29
月刊「シン・道楽亭コラム」 第17回
演芸ファンがほしかったスマホアプリを作りました ――「ご贔屓手帖」ができるまで
~ファンの小さな困りごとから生まれたアプリの物語
シン・道楽亭
2026/09/09
「芸人本書く派列伝 オルタナティブ」 第17回
〈書評〉 役者の落語はお父さんのカレー (小宮孝泰 著)
~「演じる」と「語る」の間に、落語の魅力がある。演劇と落語を比べて見つけた、笑いの秘密
杉江 松恋
2026/09/22
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第10回
ああ…麗しの吉本興業……
~吉本興業を辞める話なのに、なぜこんなに爆笑してしまうのか!?
桂 三四郎
2026/05/12
「芸人本書く派列伝 オルタナティブ」 第15回
〈書評〉 笑点出演者其俤 三〇〇〇回の記録と余禄 (神保喜利彦 著)
~ページを開けば、昭和の日曜夕方が帰ってくる。読むほどに『笑点』がもっと好きになる“非公式”ガイド
杉江 松恋
2026/07/20
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第41回
一途に講談を生きる 田辺いちか(前編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2026/07/14
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第13回
「継続は力なり」ではない
~僕を待っていた、悲しい結末。“計画倒れ人生”を笑い飛ばす愉快な実話エッセイ!?
桂 三四郎
2026/09/29
「テーマをもらえば考えます」 第14回
師匠のコーヒーは
~笑いも苦みもたっぷり、師弟をつなぐコーヒーの思い出を綴ったエッセイ
三遊亭 天どん
2026/09/30
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第42回
一途に講談を生きる 田辺いちか(中編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2026/07/15
「芸人本書く派列伝 クラシック」 第17回
〈書評〉 はい、出前落語です 北の噺家=落語活動家の誕生 (東家夢助 著)
~落語家を辞めた男が函館で見つけた、「自分だけの落語」
杉江 松恋
2026/10/01
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第43回
一途に講談を生きる 田辺いちか(後編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2026/07/16
「すずめのさえずり」 第十四回
すずめ踊りを見ようとや
~落語家なのにバク宙を猛特訓!? 笑いと汗が詰まった、夏の風物詩「住吉踊り」の舞台裏
古今亭 志ん雀
2026/09/28
「マクラになるかも知れない話」 第十四回
君たちはどう痩せるか
~日常の些細なモヤモヤを、落語みたいに笑い飛ばしてくれる爽快エッセイ!?
三遊亭 萬都
2026/09/25
「芸人本書く派列伝 オルタナティブ」 第17回
〈書評〉 役者の落語はお父さんのカレー (小宮孝泰 著)
~「演じる」と「語る」の間に、落語の魅力がある。演劇と落語を比べて見つけた、笑いの秘密
杉江 松恋
2026/09/22
月刊「シン・道楽亭コラム」 第17回
演芸ファンがほしかったスマホアプリを作りました ――「ご贔屓手帖」ができるまで
~ファンの小さな困りごとから生まれたアプリの物語
シン・道楽亭
2026/09/09
月刊「シン・道楽亭コラム」 第17回
演芸ファンがほしかったスマホアプリを作りました ――「ご贔屓手帖」ができるまで
~ファンの小さな困りごとから生まれたアプリの物語
シン・道楽亭
2026/09/09
「宇宙まで届け! 圧倒的お転婆日記」 第17回
ありがとう失言、待っているよ暴言
~宇宙一の美人浪曲師が綴る、愛おしすぎる芸人日記
東家 千春
2026/09/03
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第41回
一途に講談を生きる 田辺いちか(前編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2026/07/14
「令和らくご改造計画」
第十四話 「踊る金持ちピエロ」
~最近の前座さんたちは、時々おかしい
三遊亭 ごはんつぶ
2026/09/12
「座布団の片隅から」 第17回
好楽
~祝・傘寿! タフすぎる三遊亭好楽師匠の宴
三遊亭 好二郎
2026/09/07
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第13回
「継続は力なり」ではない
~僕を待っていた、悲しい結末。“計画倒れ人生”を笑い飛ばす愉快な実話エッセイ!?
桂 三四郎
2026/09/29
「コソメキネマ」 第十七回
玉川祐子師匠
~103歳の玉川祐子師匠、ついに『徹子の部屋』へ!! 映画は『ヤング@ハート』をご紹介。
港家 小そめ
2026/09/19
「艶やかな不安の光沢」 第4回
N氏の碑から浪江の海まで
~長崎の碧い海から、忘れられない故郷の海へ。喪失と希望のロードムービーのようなエッセイ
林家 彦三
2026/09/04
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第47回
女性講釈師の歴史をたどる
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2026/09/13
「くだらな観音菩薩」 第17回
善財童子
~自転車屋の陰謀から善財童子へ。妄想と悟りが交錯する、愉快な仏像コラム!!
林家 きく麿
2026/09/16
「くだらな観音菩薩」 第15回
阿弥陀如来
~同期であり、仲間であり、ライバルであり、親友だった蜃気楼龍玉師匠への想い。そのままの言葉、そのままの心
林家 きく麿
2026/07/16
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第10回
ああ…麗しの吉本興業……
~吉本興業を辞める話なのに、なぜこんなに爆笑してしまうのか!?
桂 三四郎
2026/05/12
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第9回
優雅な航海中の後悔を公開
~“憧れの仕事”から繋がる伏線が鮮やかな船旅エッセイ!!!
桂 三四郎
2026/04/13
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第11回
オシャレは落語家を変える
~バレたら破門の危険なオシャレ!?
桂 三四郎
2026/06/28
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第12回
プロレタリアの街
~「絶対にここに戻ってきたらあかんで」そう言われた青年は22年後、落語家として帰ってきた。笑って最後にじんとくる実話エッセイ!!!
桂 三四郎
2026/08/10
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第5回
落語家の夢
~俺の目は、まだ濁っていない!!!
桂 三四郎
2025/11/27
「令和らくご改造計画」
第四話 「初心者よ永遠なれ」
~AIが落語を演じる時、それでも人は笑えるのか?
三遊亭 ごはんつぶ
2025/11/12
「令和らくご改造計画」
第六話 「若手人気落語家殺人事件 【事件編】」
~古典派と新作派の溝!?
三遊亭 ごはんつぶ
2026/01/12
「艶やかな不安の光沢」 第1回
謂れなきものたちの飛躍
~年始からとちってしまった芸人の胸のうち
林家 彦三
2026/02/12
「テーマをもらえば考えます」 第13回
フロートの向こう側
~テーマのクリームソーダにちなんで、いろんなお酒でフロート、やります!?
三遊亭 天どん
2026/08/31
編集部のオススメ
「講談最前線」 第25回
2026年8月の最前線 【前編】 (神田鯉栄が帰って来た!)
~講談はいつも面白く、そして新しい
瀧口 雅仁
2026/08/24
「令和らくご改造計画」
第十三話 「誰のおかげで」
~最近の前座さんたちは、時々おかしい
三遊亭 ごはんつぶ
2026/08/13
「けっきょく選んだほうが正解になんねん」 第12回
プロレタリアの街
~「絶対にここに戻ってきたらあかんで」そう言われた青年は22年後、落語家として帰ってきた。笑って最後にじんとくる実話エッセイ!!!
桂 三四郎
2026/08/10
「釈台を離れて語る講釈師 ~女性講釈師編」 第44回
情熱に出会い、魂を語る 神田紅(前編)
~魅力と素顔に迫るインタビュー
瀧口 雅仁
2026/08/09
「座布団の片隅から」 第16回
別荘
~優雅な大人の夏休み……のはずだった。涼やかな高原の別荘での珍事件を綴る爆笑避暑日記!!
三遊亭 好二郎
2026/08/07
「宇宙まで届け! 圧倒的お転婆日記」 第16回
まだ満足にビールが飲めていない夏
~宇宙一の美人浪曲師が綴る、愛おしすぎる芸人日記
東家 千春
2026/08/03
「くだらな観音菩薩」 第15回
阿弥陀如来
~同期であり、仲間であり、ライバルであり、親友だった蜃気楼龍玉師匠への想い。そのままの言葉、そのままの心
林家 きく麿
2026/07/16
掲載記事300本記念
〈掲載記事300本記念〉 柳家さん喬師匠 スペシャルインタビュー【前編】
~小さん師匠の「おめでとう」から始まる新しい年
話楽生Web 編集部
2026/01/25