流行

「座布団の片隅から」 第18回

 さて話は逸れるが、ここ数年、YouTubeで大流行した『BreakingDown』というコンテンツがある。

 「1分間で最強を決める」というコンセプトで、喧嘩自慢や格闘技経験者など、さまざまな参加者が戦う番組である。決着がつくのは一瞬である。

 対戦相手はオーディションを経て決まることも多く、一触即発のハラハラ感や人間模様が盛りだくさんなので、いわゆる「ダレ場」がない。全部見どころ。格闘技に馴染みのなかった層にも間口を広げるなど、その影響力は大きい。

 プロの格闘家の試合を見ていると、玄人にしかわからない技術がたくさん詰まっている。そこに魅力を感じる格闘技ファンもいる一方で、まったく興味がない人が世の中では大多数を占める。タイパ重視の現代、プロの技術や試合の奥深さを楽しむ余裕が、現代人には年々なくなってきているのかもしれない。

 そこで流行ったのが『BreakingDown』。玄人向けのテクニカルな技術や、長いラウンドを通じた試合運び、駆け引きを知らなくても、初心者にとって非常にわかりやすくて面白い。

 またプロの格闘技では、本番のイベントに向けて、対戦相手同士の因縁や背景、そこに至るまでのストーリーも含めて盛り上げていくことがある。感動的だが、その分、どうしても回収するまでが長くなってしまう。

 『BreakingDown』は、オーディションから選手同士の因縁や人間模様を見せ、それを本戦で一気に回収するのだ。早い。何より刺激的だ。

 ――そりゃ流行るよなと思う。

 要するに、「技術や芸の奥行きが魅力だが、初心者には伝わりにくいコンテンツの“おいしいところ”を抽出・要約し、そこに過激さを加えたもの」が今の主流ではなかろうか。

 その一方で、プロの格闘技の競技性と『BreakingDown』ではギャップがあるという問題もはらんでいる。業界の入り口として機能しつつも、そこに一つ大きな情報の隔たりができてしまうのだ。