ドンといけ美馬 (後編)
鈴々舎馬風一門 入門物語 第2回
- 落語
鈴々舎 美馬
2025/05/02
感無量の想い
そうして高座返し、楽屋番、太鼓番、タテ前座と6年の年月が経ち、2023年11月1日に二ツ目に昇進が決定した。発表があったのは、4月1日。エイプリルフールの冗談だと言われないかヒヤヒヤしたが、師匠にお会いした時に「長かったな、おめでとう」と仰っていただけた言葉で、コロナ禍の中での陰鬱とした気持ちも含めて、心の霧が全て晴れて道が見えたのを感じることができ、本当に嬉しかった。
そこからは、ずっと前座修業中の目標だった、二ツ目昇進披露の会で師匠に口上に上がっていただくという夢を叶えるべく、開催に向けて全力で取り組んだ。師匠は私に「ドンとやれ」といつも仰ってくださる。
二ツ目に昇進する際には、地元である相模原の憧れの舞台でドンッと大きな花火を打ち上げたい。その夢は、1800席の大きな会場で師匠と馬るこ師匠、一門ではないが学生時代からの憧れである蝶花楼桃花師匠にご出演いただき、いっぱいのお客様の前で念願の口上を師匠に行っていただく形で実現した。師匠が私の口上を述べてくださっている間、感無量の想いで早くも泣きそうになってしまった。
そして口上の最後、落語協会の真打昇進披露興行での名物、通称「馬風ドミノ」をしてくださった。師匠が口上に並んでいる隣の師匠の肩をポンと押すと、ドミノのようにみんな崩れて倒れる。会場が大盛り上がりになる伝統芸だ。真打になる時には師匠に口上に並んでもらい、馬風ドミノをしてもらうのが夢という先輩も多い。
そんな馬風ドミノを二ツ目昇進披露でやってもらえた落語家は、私だけだと思う。私は、もし叶うなら二ツ目昇進の時にやっていただけたらなと、ずっと夢に描いていた。その夢が叶えられて、もうこの上なく幸せで感謝の思いでいっぱいだった。あの日のことは、これからも一生忘れられないと思う。
私の次の夢は、真打昇進披露興行で、師匠に口上に並んでいただき、馬風ドミノをやっていただくことだ。その目標を胸に、師匠とおかみさんへ御恩返しができるようこれからも一生懸命、精進し続けようと思う。
(了)
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